初出:日経エレクトロニクス、2011年5月16日号
図1 耐圧を高めた試作品
試作した耐圧1.1kVのGaN系パワー素子(写真:パウデック)
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 現行のSiに続く、パワー半導体素子(以下、パワー素子)の次世代材料として注目を集めるSiCとGaN。いずれも製品化が始まっており、耐圧600V以上はSiC、600V以下はGaNとされている。だが、この“常識”が覆される可能性が高まった。2011年春、国内のベンチャー企業であるパウデックが、耐圧1.1kVで、かつ低コストで製造できるというGaN系パワー・トランジスタの試作に成功したからである(図1、2)。これで、高耐圧品が求められる用途で、次世代パワー素子の選択肢の幅が広がる可能性が出てきた。

図2 耐圧1.1kVと電流コラプスの抑制を実現
パウデックは、サファイア基板上にGaN系パワー・トランジスタを試作した(a)。耐圧は1.1kVと高い(b)。ドレイン電圧を印加した後に、オン抵抗が大きくなってしまう「電流コラプス」現象の発生を抑制した(c)。(図:パウデックの資料を基に本誌が作成)
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 GaN系パワー素子の研究開発品の中には、耐圧1kV超を実現したものもあった。だが、特殊な構造をしていたり、高価なGaN基板を利用していたりと実用化が難しかった。