[画像のクリックで拡大表示]

 独立行政法人交通安全環境研究所は2015年7月3日、国連大学ウ・タント国際会議場(東京・渋谷区)で「平成27年度交通安全環境研究所講演会」を実施した。主題を「交通事故ゼロを目指した自動運転技術の導入に対する取り組み」とし、産学官から約400人が参加した。

 招待講演では、筑波大学副学長・理事の稲垣敏之氏が「人と自動走行システムが織りなす光と影の交錯模様~課題解決へ向けたデザインの視点~」というタイトルで講演した。まず航空機の自動操縦の進歩について紹介し、離陸100万回あたりの全損事故件数が1950年代においては40便以上あったものが、自動操縦の高度化により現在では1件以下まで減少したと述べた。航空機や自動車の自動運転における共通点や相違点を解説したあと、操縦士やドライバーの情報処理過程に触れた。一般的には認知・判断・操作の3項目を挙げることが多いが、稲垣氏は認知の前段階に知覚があると指摘した。高齢化による視覚や聴力の低下を十分に織り込む必要があると強調した。

 続いて自動車の自動運転において、NHTSA(米運輸省道路交通安全局)が2013年に示した自動運転レベルのなかで、レベル2とレベル3に関して詳しく考察した。レベル2はドライバーにおける監視制御の段階であり、今後は監視しやすいHMI(Human Machine Interface)の開発が必然だと指摘。そしてレベル3で最大の課題は、権限譲渡であるとした。自動運転でのシステム機能が限界となった場合、運転者へ運転を権限譲渡するが、そのタイミングや通知方法、さらに法的解釈などについて、産学官でさらなる協議が必要だと語った。