スズキの新社長に就任した鈴木敏弘氏(左)と最高経営責任者の兼務を続ける会長の鈴木修氏
スズキの新社長に就任した鈴木敏弘氏(左)と最高経営責任者の兼務を続ける会長の鈴木修氏
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 カリスマに依存する経営体制を変えるのは極めて難しい──。2015年6月30日、スズキが発表した社長人事。同日付で、会長兼社長だった鈴木修氏が社長を退任し、長男の鈴木俊宏氏が副社長から社長に昇格した(図)。

 スズキにとり、85歳と高齢の修氏に依存する経営から脱却する若返りが急務であることは間違いない。だが、修氏は最高経営責任者(CEO)を今後も兼務し、経営にも深く関与し続ける姿勢を記者会見での発言の端々に強くにじませた。

 修氏は、体制の本格的な移行に関して「可及的すみやかに(実施したい)と申し上げておきたい」と語る一方、「あまり口を出さないと(幹部や社員が)仕事をやらなくなる」と発言。さらに地元である静岡県浜松市などでの財界活動も「今まで通りやっていきたいと思っている」とした。

 とりわけ印象的だったのが、ある証券アナリストからの質問に対する経営陣の回答だ。同アナリストは新社長による中期経営計画(以下、中計)のプレゼンテーションに関して、「過去5年間の中計は表面的な売上高や経常利益率は達成しているが、為替(の円安効果)がなければぜんぜんダメだ。台数も4輪、2輪とも(目標に)全然届かず、インドに投資したものは全然回収できていない。国内の相良工場、タイやインドネシアへの投資もそうだ。(今後5年間の設備投資計画の)1兆円はそもそも何に投資するのか。配当性向が15%という非常識な目標にはがっかりだ。せめて20%、業界的には30%ではないか。これらの点を新社長に聞きたい」。