三菱化学は、高出力LEDの製造で利用するGaN基板を増産する。同社は茨城県の筑波事業所と岡山県の水島事業所で同基板を製造している。このうち、筑波事業所の生産能力を2倍にするという。具体的な生産能力は非公開。現在拡張工事中で、2015年中の稼働を目指す。三菱化学がGaN基板を増産するのは、照明や自動車のヘッドランプなどで利用する高出力LEDの需要が拡大しているためである。

 白色LEDの基になる青色LEDチップは一般に、安価なサファイア基板で製造する。だが、青色LEDはGaN系半導体で構成されており、サファイア基板との格子定数や熱膨張係数が大きく異なるため、結晶欠陥が多く、高出力化が難しい。一方、GaN基板であれば、この問題が起きにくい。そのため、高出力LEDでGaN基板を採用する動きがあった。今回の三菱化学の増産は、GaN基板利用のLEDの需要が増えている証左と言えるだろう。

 ただし、現在のGaN基板製品は、HVPE法と呼ばれる気相法で製造しているので、価格が高い。そこで三菱化学は、高品質なGaN基板を低コストに実現できる可能性がある、「アモノサーマル法」と呼ばれる液相法の研究開発に長らく取り組んでいる。2015年度中には、液相法によるGaN基板の量産を始めることを目標にしている。

 なお、三菱化学のGaN基板製品の主力は口径50mm(2インチ)のもの。より口径が大きい100mm(4インチ)品を現在サンプル出荷中である。