図1 EpiSealされた集積化センサーの構造(V. A. Hong et al., Transducers 2015, T2A.005, pp. 295-298から引用)
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図2 新しいEpiSeal技術の工程(Yushi Yang et al., Transducers 2015, T4P.027, pp. 1326-1329から引用)
図2 新しいEpiSeal技術の工程(Yushi Yang et al., Transducers 2015, T4P.027, pp. 1326-1329から引用)
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図3 InvenSenseのAlN圧電集積化MEMSプラットフォーム(J. M. Tsai et al., Transducers 2015, T4P.102, pp. 2248-2251から引用)
図3 InvenSenseのAlN圧電集積化MEMSプラットフォーム(J. M. Tsai et al., Transducers 2015, T4P.102, pp. 2248-2251から引用)
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設計自由度が高く

 Transducers 2015では、Stanford UniversityのThomas Kenny教授のグループとRobert Bosch RTCから、これまでの研究開発を統合した成果が発表されました(V. A. Hong et al., T2A.005, pp. 295-298)。EpiSeal技術によって、これまで別々には試作されていた3軸加速度センサー、圧力センサー、および温度補償用共振型温度センサーが同一ダイの上に集積化された形で試作されています(図1)。

さらに、より汎用性に富む新しいEpiSeal技術も発表されました(Yushi Yang et al., T4P.027, pp. 1326-1329)。図2に示すように、デバイス構造を作り込んだSOIウエハー(b)を別のSi基板にひっくり返して直接接合し(c)、面外方向の動きを検出するための上部電極構造(e)(f)、犠牲層エッチングのためのリリースホールなどを形成し、犠牲層エッチング(g)の後、EpiSealをします(h)。後は従来のEpiSealの工程と同じです。従来はデバイス内の隙間・空間は、SiO2で埋め戻せ、しかも適切な時間内に犠牲層エッチングできる大きさでなくてはなりませんでしたが、新しいプロセスによってデバイス構造に大きな設計の自由度が生まれます。

 MEMS分野でアメリカンドリームを体現した企業に米InvenSense社があります。同社の9軸コンボセンサーは、2014年時点で3mm×3mmと最小のフットプリントを誇ります。ライバル企業が5つ程度のダイで9軸コンボセンサーを構成するなか、同社はわずか2つのダイで構成しています。これは、「Nasiri Process」とも呼ばれる集積化プロセスによって可能になっていますが、この名前は創業者Steve Nasiri氏の姓を冠したものです。Nasiri Processは、日経BP社のセミナーなどで解説しているように、キャビティSOI基板に作製したデバイスをASICウエハーで真空封止しつつ、両者を電気的にも接続するものであり、ウエハー接合にはAlGe共晶接合が使われます。このプロセスによって、MEMSを気密封止する蓋ウエハーが不必要になるだけではなく、集積化によってワイヤ・ボンド・パッドの数を減らせることも重要です。