豊橋技術科学大学の澤田 和明氏は2015年5月11日、電子情報通信学会集積回路研究専門委員会(ICD)の「LSIとシステムのワークショップ2015」(北九州国際会議場)に登壇。「非標識神経伝達物質イメージセンサ開発と異分野応用展開」と題して、LSIと医学系の技術を融合させて新しいセンサーチップを開発する取り組みについて講演した。

 センサーを専門とする澤田氏には、医療分野の研究者などから検出の迅速化や装置の小型化のためにLSIやMEMSでセンサーの集積度を上げてほしいという要望が多く寄せられているという。だが、医療分野はマーケットの規模が小さく個数が出ないため、単純にセンサーチップの集積度を上げても事業として採算に乗せることが難しい。そこで澤田氏は、コストをかけてセンサーの集積度を高める前提条件として「これまでできなかったことができるようになるか」をまず考えるべきだとする。例えば、照度計はフォトダイオードの登場でイメージセンサーとなり、温度計は人感センサーを経てサーモグラフィー、圧力スイッチは指紋認証センサーへと進化して、新しい価値を生み出していった。

 澤田氏は、前豊橋科学技術大学学長でヒトゲノム計画のリーダーだった榊佳之氏とディスカッションしたことがあるという。その際、榊氏は6年かかると思っていたヒトゲノムの解読が4年で済んだ理由として、「生命科学が進歩しただけでなく、その前に計測技術が進歩したことが大きかった。生命科学の進歩の歴史は、測定技術の進歩の歴史」と発言した。それを聞いた澤田氏は、これまで測れなかったものを測れるようにする計測技術を開発することで、あらゆる科学の進展に貢献できると感じたという。

豊橋技術科学大学の澤田 和明氏
豊橋技術科学大学の澤田 和明氏