タンデム型電池2個、電気化学セルを3個直列に接続したときの電流-電圧特性(出所:理化学研究所)
タンデム型電池2個、電気化学セルを3個直列に接続したときの電流-電圧特性(出所:理化学研究所)
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 理化学研究所は4月28日、太陽光を水素として貯蔵する安価で簡便なシステムを構築し、エネルギー変換効率15.3%を達成したと発表した。理研・社会知創成事業イノベーション推進センター中村特別研究室の中村振一郎特別招聘研究員と藤井克司客員研究員(東京大学特任教授)らの研究チームによる成果。

 同研究チームは、再生可能エネルギーで発電した電力を利用し、電気化学的な手法を用いて水素を得て、それを貯蔵するシステムの開発に取り組んだ。植物は葉の中でアンテナ機構という精妙なナノ構造を用いて光合成を行い、炭水化物を貯蔵する。研究チームは、こうした光合成の機構を応用し、のこぎり状の断面構造を持つ「フレネルレンズ」を用いて集光するタンデム(多接合)型太陽電池を電源とする水分解電気化学セルで水素を発生させ、貯蔵することに成功した。

 この太陽電池を直列に接続することで、水を電気分解できる電圧まで高めるとともに、最もエネルギーロスの少ない接続方法を検討した結果、太陽光から水素への変換効率を15.3%まで高めることに成功したという。

 研究チームの評価では、従来のシリコン太陽電池と電気化学セルを使った場合の光から水素への変換効率は、シリコン太陽電池を3個直列に接続した場合で2.0%、4個直列に接続した場合で6.1%となり、いずれも変換効率が良くないことが分かった。これは、シリコン太陽電池自体の光から電気への変換効率が悪いことが大きく影響しているという。

 フレネルレンズを用いて太陽の位置に合わせて効率よく集光できるタンデム型太陽電池を使用することで、光から水素への変換効率が12.2%に飛躍的に向上した。さらにタンデム型太陽電池を2個直列、電気化学セルを3個直列に並べて太陽電池の最大出力電圧と電気化学セルの動作電圧を近づけることで、変換効率は15.3%まで向上した(上図)。