試作したペロブスカイト-Siタンデム型太陽電池。面積は1cm2。(写真:Rongrong Cheacharoen/Stanford University)
試作したペロブスカイト-Siタンデム型太陽電池。面積は1cm2。(写真:Rongrong Cheacharoen/Stanford University)
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 米Massachusetts Institute of Technology(MIT)と米Stanford Universityの研究者は、単結晶Si太陽電池とペロブスカイト型太陽電池を積層したタンデム構造の太陽電池を共同で試作した。変換効率は13.7%と高くないが、29%を実現する技術のメドは立っており、「最終的には35%超も達成し得る」(論文)という。実現すれば、高い変換効率を備え、しかも格安で製造できる太陽電池になる可能性がある。

 ペロブスカイト型太陽電池は、ここ数年の性能向上が著しく、2014年には変換効率20.1%の報告例もでてきた。材料費が安く製造プロセスも単純であるため、将来的に太陽電池の市場に大きな影響を与える可能性があると見られている。

 ただし、ペロブスカイト型太陽電池は、発電に利用可能な光の波長領域がやや短波長側に偏っている。一方、現在主流の太陽電池であるSi系太陽電池では、やや長波長の可視光や近赤外線が発電に寄与している。このため、両者を組み合わせれば、より幅広い波長の光や近赤外線を利用でき、既存のSi系太陽電池を大きく超える高効率太陽電池が実現するのではないかという期待が研究者の間に高まってきていた。

 その組み合わせをいち早く試したのがMITらである。トップセルにペロブスカイト型太陽電池、ボトムセルに単結晶Si太陽電池を用いたタンデム構造の太陽電池を作製したとする。

 MITらによれば、ペロブスカイト型太陽電池とSi系太陽電池を単純に積層した例はこれまでもあったが、電力を個別に取り出していたとする。両太陽電池を一体の素子として作製したのは今回が初めてという。

 ただし、作製したタンデム構造の太陽電池の変換効率は13.7%と低い。その理由は論文によれば、(1)MITらが作製した単結晶Si太陽電池とペロブスカイト型太陽電池が、素子の最適化が十分でないことで、それぞれ単体の太陽電池としての性能が低いこと、(2)特にペロブスカイト型太陽電池に流れる電流が小さく、素子全体の電流値が制限されたこと、などを挙げる。(1)について具体的には、単結晶Si太陽電池単体の変換効率は13.8%、ペロブスカイト型太陽電池単体は13.5%だった。

 MITらは、逆にこれを今回のタンデム構造の太陽電池の伸びシロの大きさだとみる。積層する各太陽電池で、最高効率を出すような最適化技術を採用できれば、今回のタンデム構造の太陽電池の変換効率は29.0%に届くとする。

 課題は、ペロブスカイト型太陽電池が、主な材料の1つとして鉛(Pb)を使う点と、劣化しやすく素子寿命が非常に短い点だ。ただ、最近の研究開発ではPbの代替材料の探索や、寿命の改善が急速に進んでいる。