ICTを使って下水処理を効率化する実証実験が、2015年2月に福岡県で本格的に始まった。ICTによるプロセス制御とリモート診断を組み合わせることで下水処理にかかるコストやエネルギーを削減しようという試みで、国土交通省国土技術政策総合研究所の委託を受けて東芝、日本下水道事業団、福岡県、公益財団法人福岡県下水道管理センターが共同で実施する。

 実証実験は福岡県宝満川流域下水道 宝満川浄化センターで実施する。反応タンクにおける曝気(水処理で空気の吹き込みや攪拌などをして液中に酸素を供給すること)の新しい風量制御技術と、下水処理施設外からのリモート診断技術を組み合わせて、下水処理施設における消費エネルギーを低減する。

 具体的には(1)NH4-N(アンモニア)センサーを活用した曝気風量制御技術、(2)制御性能改善技術、(3)多変量統計的プロセス監視技術――という3つの要素技術を組み合わせる。(1)は宝満川浄化センターに設置したセンサーでアンモニアと溶存酸素(DO)の値を計測し、最小限のDO濃度(=最小の曝気量)で最大限アンモニアを除去できるよう風量を制御する。これにより風量の削減と硝化の安定化の両立を図る。(2)はポンプやブロワーを制御するパラメーターをリモートで調整し曝気風量制御を効率化する。(3)は下水処理施設における水量や水質などのデータをリモートで監視し、データの相関関係から水処理プロセスにおける異常の兆候を検出するもの。異常発生時にはその要因を推定し、曝気風量制御を含む水処理が安定するようにシステムを調整する。

 これらの技術を導入することで福岡県は、安定した処理品質を確保しつつ、下水処理にかかるコストやエネルギーを削減できると期待する。実際に下水処理施設に設置するのは(1)で使うセンサーやプロセスコントローラーだけなので、財政状況の厳しい自治体でも容易に導入できるという。(2)と(3)に必要な設備はリモート側(今回の実証実験では東芝社内)に設置され、下水処理施設とネットワークで結ばれる。

 今回の実証実験は、国交省の「下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)」の一環。実験の参加メンバーは今後、運転条件を適時変更しながらデータを収集し、より効率的な処理方法を研究していく予定である。