人工関節でタッグを組んだ帝人とナカシマ。写真は左から帝人の坪倉正行氏、荒尾健太郎氏、ナカシマの中島基善氏、中島義雄氏
人工関節でタッグを組んだ帝人とナカシマ。写真は左から帝人の坪倉正行氏、荒尾健太郎氏、ナカシマの中島基善氏、中島義雄氏
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 帝人とナカシマホールディングス(以下、ナカシマ)は、ナカシマの100%子会社であるナカシマメディカルに帝人が50%出資し、折半出資の合弁会社として2015年4月1日に社名を「帝人ナカシマメディカル」に改めることで合意した(発表資料:PDF)。2015年2月23日、ナカシマメディカルの約15億円の第三者割当増資を帝人が引き受ける株式引受契約を締結。帝人ナカシマメディカルの社長には、帝人から坪倉正行氏が就任し、現ナカシマメディカル社長の中島義雄氏は代表権のある会長職に就く。

 ナカシマグループは1926年、岡山県に漁船用プロペラ製造会社として創業。現在では船舶用プロペラで国内市場シェア70%程度、世界市場シェア25~30%程度を維持している。ナカシマメディカルは1987年、ナカシマのメディカル事業部を分社化して設立。人工肘関節や人工膝関節などを開発・製造・販売し、現在では年間売上高30億円ほどに成長している。従業員は186人。

 しかし、人工関節の国内市場は先行する米国メーカーがシェア80%ほどを占めており、ナカシマメディカルのシェアは3%程度にとどまっている。「米国メーカーは人工関節事業の歴史が長く、経験やノウハウが豊富で、営業力もある。しかし、ものづくり自体では当社は引けを取らないと感じている。プロペラで培った研磨技術などを生かし、日本人による日本人のための人工関節でシェアを伸ばしたい」(ナカシマ社長の中島基善氏)。ナカシマメディカルは他社との協業を含む事業強化策を検討していた。

 一方、帝人は、高機能素材とヘルスケアの融合領域での新たな事業展開を模索していた。2014年春、帝人の提案で今回の資本提携の協議が始まり、「互いの目標感にまったく違和感がなく、トントン拍子に話が進んだ」(帝人グループの専務執行役員で新事業推進本部長の荒尾健太郎氏)という。

 今後は、帝人ファーマが長年培ってきたマーケティング手法を導入し、ターゲットを明確にすることで、戦略的な営業体制を再構築していく。また、両社の技術シナジーを生かした製品開発を進め、帝人の世界的なネットワークを使って社内外の技術を積極的に活用・導入する。将来は、帝人の素材を用いた人工関節を開発する考えだ。これらの施策により、2020年には売上高100億円、国内市場シェア10%を目指す。また、将来は東南アジアなど、人々の体型が日本人に近い地域を中心に、海外展開を推し進める方針だ。

■変更履歴
記事公開当初、荒尾氏の役職が間違っていました。お詫びして訂正いたします。本文は修正済みです(2015年2月23日21:00)。