ドイツBMW社のEV普及プログラムと連携して実現(出所:ドイツBMW社)
ドイツBMW社のEV普及プログラムと連携して実現(出所:ドイツBMW社)
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 米国の電力・ガス会社のPacific Gas and Electric(PG&E)社は1月5日、ドイツBMW社と提携し、電気自動車(EV)の蓄電池を、電力系統の運用と最適に連携制御するための実証プログラムを開始すると発表した。

 これによって、電力需要のピーク時の消費電力を削減し、送電線や変圧器などの増強を最小化することで、低コストで電力網の信頼性を向上させる。また、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを、より多く導入できるようになるとしている。

 EVの普及を促進するような、公共インフラの料金体系の実現を後押しするという。

 PG&E社は、デマンドレスポンス(DR:需要応答)サービスの一環として、大規模な工業用や商業用の顧客を対象に実証プログラムを実施する。最小出力100kWの受送電システムを、BMW社のEVが搭載している蓄電池と連携して制御する。

 BMW社はまず、米カリフォルニア州Mountain Viewにある技術開発拠点に、大規模なエネルギー貯蔵システムを導入する。このエネルギー貯蔵システムは、BMW社が試験運用中のEV「MINI E」で採用しているLiイオン蓄電池で構成される。

 このエネルギー貯蔵システムを使って、電力需要の少ない時間帯には、DRによって価格が下がった電力を貯めておき、電力需要の多い時間帯に放電する。

 次の段階で、BMW社は、最大100件の顧客に対し、自社のEV「BMW i3」の次期モデルを提供する。主宰するEV普及プログラム「BMW i ChargeForward Program」の一環として取り組むもので、提供した BMW i3の蓄電池を、 PG&Eの電力系統と連携させる。

 電力需要の多い時間帯に、PG&E社はBMW i3の蓄電池への充電を抑制し、その抑制率や時間帯などの情報を、インターネットを介してBMW社に送る。その情報を受けて、BMW社は、BMW i3の蓄電池への充電を遠隔制御する。

 PG&E社は、こうした取り組みへの対価をBMW社に支払う。BMW社は、この対価を、EVの所有者の購入・運用コストを下げるために活用する。同プログラムへの参加者に対し、報酬を支払う。プログラム参加者は、携帯電話向けのアプリケーション・ソフトウェアなどを通じて、得られる報酬などの変動を把握できる。

 PG&E社は、この実証プログラムを成功させ、提携する自動車メーカーを増やし、EVの蓄電池を使ったDRによる電力網の安定化によって、電力消費者、EV所有者の両方が大きな価値を感じるサービスを展開したいとしている。

 PG&E社の電力のサービス展開地域では、現時点で6万台以上のEVが所有されている。