スイスの大手重電メーカーのABB社は1月12日、北海において、ノルウェーとデンマークを結ぶ「スカゲラク海峡横断第4送電線」として、50万Vの高圧直流送電(High Voltage Direct Current:HVDC)設備を完工した発表した。自励式の直流送電における世界最高の電圧だという。

 スカゲラク海峡横断第4送電線は、電力系統への再生可能エネルギーの大量導入に備えて建設された。ABB社は、70万kW対応の変電所を2カ所分、納入した。

 ABB社の自励式交直変換器「HVDC Light」を採用したことで、50万Vの送電を実現した。この変換器は、電力を高圧交流から直流、交流から直流に変換し、かつ、高い制御機能と変電所の省スペース化を実現できるとしている。

 自励式のHVDCによる送電システムは、地中送電や海底送電で多く採用されている。洋上風力発電所などの再生可能エネルギー発電所からの送電や、本土から離島、石油・ガスプラットフォームへの送電、スペース上の制約が多い都市中心部への送電、多国間の連系などである。

 今回のスカゲラク海峡横断第4送電線では、デンマークの風力発電などの再生可能エネルギーの出力変動を火力発電などで補うことで、ノルウェーStatnett社とデンマークEnerginet.dk社の電力系統の信頼性を高め、より多くの再生可能エネルギーを導入できるようにする。

 スカゲラク海峡では、今回の第4送電線まで、4本の送電線が敷設された。いずれも、ABBが送電システムを納入した。第1と第2送電線は1970年代、第3送電線は1993年に敷設された。4本合計の総延長は240kmで、送電容量は合計170万kWとなっている。

  第3送電線は他励式のHVDC、第4送電線は自励式のHVDCで構成されていることから、この二つの技術を双極モードで運用する。HVDCを双極モードで運用するのも、世界初となる。

 双極モードによる運用は、ABBの電力制御システム「MACH制御システム」によって、他励式と自励式の異なる電力変換を最適に制御することで実現した。

 スカゲラク第4送電線は、完工済みの自励式直流送電線としては世界で16例目になり、このうち15件をABB が手掛けたとしている。