開発したシステムと、研究を主導する一人であるUNSWのMark Keevers氏
開発したシステムと、研究を主導する一人であるUNSWのMark Keevers氏
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 オーストラリアUniversity of New South Wales(UNSW)は2014年12月8日、同大学が開発中の集光式太陽光発電システムで初めて変換効率40%を達成したと発表した。

 UNSWが開発しているのは、太陽光を放物面鏡で反射、集光し、その光束をダイクロイックミラーで分光して、透過光をSi系の太陽電池に、反射光を3接合型の化合物太陽電池に照射することで発電につなげるシステムである。このため、システムは一見、反射望遠鏡のように見える。

 ただし、UNSWが今回独自に開発した技術はダイクロイックミラー部分で、太陽電池には、米Boeing社の子会社のSpectrolab社のセルなどを用いているという。

 ダイクロイックミラーは、誘電体多層膜鏡とも呼ばれ、特定の周波数幅の光は透過し、それ以外は反射するなどの機能を備える。その透過周波数帯についてUNSWは近く出版される論文などで発表するとしているが、2013年に公開した説明資料によれば、波長が900nm弱~1100nm超の近赤外線を透過させ、その他は反射させている模様だ。

 900nm弱~1100nm超の近赤外線帯は、Si系太陽電池が高い変換効率を実現しやすい波長領域である。一方、残りの波長域は3接合型化合物太陽電池でカバーする。3接合型化合物太陽電池のうち最も長波長対応のセルは、1600nm超までの波長の赤外線を電力に変換する機能を備えているとする。全体としては、4接合型太陽電池を用いた場合と等価になる。

 「太陽電池の父」とも呼ばれ、今回の開発にも携わっているUNSW ProfessorのMartin Green氏は、「今回の技術は、オーストラリアで普及しつつあるタワー型の大規模集光式太陽光発電システムに特に向いている」とする。

タワー型集光式太陽光発電システムは、高い塔とその周囲の大型の鏡多数から成る。鏡を用いて太陽光を塔の上部にある太陽電池に集め、発電につなげる。