電力技術ベンチャーのデジタルグリッド(東京都文京区)は12月2日、増資によって、5社・団体から5億8000万円の資金を調達したと発表した。

 日本政策投資銀行、東京大学エッジキャピタル(東京都文京区)、イノベーティブ・ベンチャー投資事業有限責任組合、電源開発、NECが増資に応じた。イノベーティブ・ベンチャー投資事業有限責任組合は、NECキャピタルソリューションと SMBC ベンチャーキャピタル(東京都中央区)が共同運営している投資組合である。

 デジタルグリッドは、東京大学の阿部力也特任教授らの研究成果の事業化を目指す東京大学発ベンチャー企業。

 阿部教授が提唱している「デジタルグリッド」は、ICT(情報通信技術)を活用し、従来の同期送配電システムではなく、基幹送電線と非同期分散型のマイクログリッドで電力網を構成する構想。

 インターネット上の情報データと同じように、「ルーター」の役割を担う電力変換装置「デジタルグリッドルーター」を使って、最適な容量の電力をやりとりする。インターネット上の情報データのように、電力にIPアドレスを付与し、電源のデータを含んだ電力情報と、電力本体とを同期させて送受電できるネットワークを構築する。

 マイクログリッドには蓄電池を備える必要があるが、電力変換装置を使い、連系するマイクログリッドや基幹系統から必要に応じて電力を融通することによって、マイクログリッドが備える蓄電池の容量を最小化できる。

 電力変換装置と蓄電池を組み合せることで、太陽光発電などの再生可能エネルギーによる電力の出力変動を吸収できるとし、再生可能エネルギーの大量導入を促進させるための、電力の融通機能を特徴とする新たなサービスを提供すると強調している。

 自立分散管理での電力の備蓄、再生可能エネルギーの導入の自由化、多方向の電力融通を実現できる技術で、電力の識別購入や無停電などの独自の電力サービスを提供できるとしている。