図1●買取価格(調達価格)の決定時期に関する3つのオプション(出所:経済産業省)
図1●買取価格(調達価格)の決定時期に関する3つのオプション(出所:経済産業省)
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図2●価格決定時期を「接続契約」時にして、処理期間を9カ月とした場合、6月に申し込みが集中しても、同じ買取価格が適用される(出所:経済産業省)
図2●価格決定時期を「接続契約」時にして、処理期間を9カ月とした場合、6月に申し込みが集中しても、同じ買取価格が適用される(出所:経済産業省)
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図3●「接続枠の確保」とする時期を、「連系承諾」から「接続契約」時に変える提案(出所:経済産業省)
図3●「接続枠の確保」とする時期を、「連系承諾」から「接続契約」時に変える提案(出所:経済産業省)
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 経済産業省は12月2日、総合資源エネルギー調査会・新エネルギー小委員会の第7回会合を開催した。同会合では、第6回までの議論を踏まえ、(1)再生可能エネルギー電源別の課題と推進策について、(2)固定価格買取制度(FIT)の運用改善について、(3)送変電設備増強時の費用負担方法についてーーの3テーマについて議論した。

 こうのうち(2)の「固定価格買取制度(FIT)の運用改善について」では、FITの運転開始前後の設備変更への対応や、買取価格(調達価格)の決定時期などに関し、法改正によらずに導入可能な運用改善案が示された。設備認定と接続枠を確保しながら工事に着手しない「滞留案件」の解消や買取価格の変更、年度末の駆け込み申請の解消などが目的だ。

 運転開始の前に設備仕様を変更した場合の対応に関しては、買取価格を設備変更時点のものに変える範囲を広げる方向で検討している。現行ルールでは、電力系統に連系する出力の大幅な変更(20%以上かつ10kW以上の増減)の場合、買取価格が変更になるが、太陽光パネルの仕様変更は「軽微変更」とされ、買取価格は変わらない。

 今回、示された事務局案では、パワーコンディショナー(PCS)などの変更による連系出力の変更(20%未満または10kW未満の出力減少は除外)に加え、太陽光パネルの基本仕様(メーカー、種類、変換効率)を変更した場合も、買取価格が変更時点の価格に変わる。そして、50kW以上の設備の変更については、原則180日以内に変更後の設備を確保することを条件としている。

 経産省によると、設備認定を得た案件の約2割が、メーカーの違う太陽光パネルに変えるなど発電設備の「軽微変更」を行っており、そのなかに「滞留案件」など、工事に着手しないままFIT初期の買取価格を維持している案件が含まれるという。パネルなどの軽微変更も設備認定の変更要件にすることで、買取価格を引き下げ、国民負担を減らす。

 また、運転開始後の設備変更に関しては、現行ルールでは、出力を変更しても当初の買取価格が適用される。改善案では、出力増加分に関しては、変更時の買取価格を適用して引き下げる。いずれも買取期間は当初のままなので、結果的に増加分は、新たに設備認定を取って買取期間20年間を確保することになると予想される。

 買取価格の決定時期に関しては、現行ルールの「設備認定時」を後ろ倒しし、コスト構造の確定する時点に買取価格を決定する方向で検討している。改善案では、「運転開始時」を理想的としつつも、プロジェクトファイナンスの組成を考慮すると「接続契約時」が現実的とし、オプション1を「接続契約時」、オプション2を「運転開始時」とした(図1)。

 接続契約時とした場合、価格決定時期の予見可能性を高めるため、申し込みから契約までの「通常の処理期間」を9カ月と明示する案も示した。これにより前年6月末に申し込みが集中することになっても、同じ年度の買取価格が適用されるため、国民負担が適性化されるとしている(図2)。

 また、今後、「滞留案件」をなくすため、電力会社の接続ルールについて、改善案を公表した。現行ルールでは、「連系承諾(予約契約)」の通知をもって「接続枠の確保」としている電力会社が多い。見直し案では、連系承諾と工事負担金の支払いを内容とする「接続契約(本契約)」の締結時点を「接続枠の確保」とし、1カ月以内に負担金が支払われない場合、契約(接続枠)を解除するとしている(図3)。

 現状で、連系承諾を受けたまま接続契約に進まない案件については、接続契約の締結を促し、相当期間を定めて、接続契約を締結するように催告し、この期間が過ぎても契約がなされない場合、予約契約を失効させる対応が示された。

 加えて、設備認定の申請時に、「土地造成や設備施工にかかわる関係法令・条例に違反する行為を行っていないこと」「認定を受けたからといって事業実施が包括的に許可されたものでないこと」を確認し、その上で関係法令・条例の手続き状況について提出を求め、その情報を地方自治体に提供するという仕組みを示した。そして、関係法令・条例への違反が確定した場合には、認定を取り消すとしている。

 (2)の「送変電設備増強時の費用負担方法」では、東京電力が群馬県北部エリアで実施している「入札公募方式」を紹介した。現状では、同じ電力系統に複数の接続検討の依頼があった場合、別々の案件として処理するため、工事負担金も単独案件を前提に算定されて高額になる傾向がある。「入札公募方式」では、送変電設備の増強が一定規模以上になると見込まれる場合、一般電気事業者は、接続検討依頼者に対して、近隣の接続案件の可能性を募ることを伝え、依頼者が単独負担の意向を示した場合を除き、ホームページで周辺地域での電源設置案件を募り、応募した複数事業者が分担して増強費用を負担する。

 会合では、「入札公募方式」が現行ルールに比べ優れているとの意見で一致し、今後、他の電力会社にも採用を促すこととした。加えて、「送変電設備の増強」を促す仕組みづくりは、電力システム改革の発送電分離における主要テーマであるため、今後、電力システム改革の検討チームと連携して、議論していくことも確認された。

 (1)の「再生可能エネルギー電源別の課題と推進策について」では、電源別に長期的な導入促進策が示された。太陽光発電に関しては、大量導入が進んでいるスペイン、ドイツ、米国の状況について説明した。そのなかで、太陽光発電の系統への影響を軽減する方法として、「出力抑制」はコスト合理的で有効な方法であること、ドイツでは双方向通信システムを利用してリアルタイムできめ細かな出力調整が実施されていることを取り上げた。

 ただ、委員からは、「現状の30日の無償での出力抑制ルールでも、事業性にかなり影響するため、安易に出力抑制できる日数を増やすべきでない」「リアルタイムの出力調整には、パワーコンディショナーなど電源設備側の準備が必要なので、早めにルールを決めないと簡単には導入できない」などの意見が出された。