図1●NTTスマイルエナジーの谷口裕昭社長(撮影:日経BP)
図1●NTTスマイルエナジーの谷口裕昭社長(撮影:日経BP)
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図2●設置ずみの太陽光発電システムの合計出力は300MW以上に(撮影:日経BP)
図2●設置ずみの太陽光発電システムの合計出力は300MW以上に(撮影:日経BP)
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図3●実装した太陽光発電システムのうち、7月は3.9%、8月は5.1%が発電停止を検知(撮影:日経BP)
図3●実装した太陽光発電システムのうち、7月は3.9%、8月は5.1%が発電停止を検知(撮影:日経BP)
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 NTTスマイルエナジー(大阪府大阪市)の谷口裕昭社長(図1)は11月4日、クラウドコンピューティングを使った電力の見える化サービス「エコめがね」の現状や、今後の事業戦略を発表した。

 同社は、西日本電信電話(NTT西日本)とオムロンの合弁会社。2011年6月の設立以降、家庭向けを中心に、電力消費量や太陽光発電システムによる発電量などを「見える化」し、省エネルギーを促進するための各種のサービスを提供している。

 再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の開始後は、太陽光売電事業向けに、遠隔監視サービスの提供にも注力している。

 「エコめがね」は、顧客の太陽光パネルに取り付けたセンサー端末が計測した発電量のデータを、クラウド上に蓄積し、パソコンやスマートフォンなどを使って閲覧したり、顧客の必要に応じて太陽光発電システム販売会社が発電状況を遠隔監視するサービス。

 同サービスの2013年度の売上高は20億円となった。この売上高は、センサー端末などのシステム購入・設置料、通信料、関連サービス料からなる。2014年度は売上高30億円を見込んでいる。

 2014年10月末時点で、センサー端末の出荷台数は4万台以上、設置ずみの太陽光発電システムの合計出力は300MW以上になっている(図2)。販売や設置を担う太陽光発電システム販売事業者は1200社以上ある。

 このうち、FITに基づく売電用の発電システムへの設置件数は、8000件以上となっている。サービスやシステムの設計上、低圧案件に向き、売電用の低圧の発電システム向けでは、国内シェアが76%に達している。一方、出力50kW以上の太陽光発電システムでの採用はほとんどない。

 同社の谷口社長によると、「エコめがね」を実装した太陽光発電システムにおける、異常検知や発電停止検知の比率は、想定していた以上に多いという。特に、夏に比率が高くなり、実装した太陽光発電システムのうち、7月には3.9%、8月には5.1%が発電停止を検知した(図3)。

 夏に発電停止が多く生じる理由は、落雷による影響で、パワーコンディショナー(PCS)の安全機能が働き、稼働を停止する日が多かったためという。発電システムに直接、落雷しなくても、周囲への落雷の影響で、送電線やケーブルなどを伝わって高電圧がPCSに達する場合にも、こうした安全機能が働くことがある。

 このほか、南側にPCSを設置していた場合に、夏の高温の影響でPCSが稼働を停止したり、集電箱の中にカエルが忍び込んでブレーカーをショートさせてしまい発電が停止することもあったという。

 同社ではまた、2014年4月に、発電事業を開始した。経済産業省の設備認定や、電力会社の連系承諾通知が発行されていながら、建設に至っていない発電所を、同社が建設する。

 合計10億円を投じ、出力40~50kW程度の発電所を、全国に約100カ所、建設する計画。

 建設地は、「エコめがね」を取り扱う太陽光発電システム販売会社から持ち込まれる案件を中心に検討している。現時点では、約1100件あった引き合いのうち、約60カ所、合計出力30MWの建設計画を進めている。

 案件の多くは、地権者が高齢で、金融機関から融資を十分に受けられなかったり、事業主体が未定だったりして、建設が実現していないものだった。

 今後の同社の戦略として、「エコめがね」の拡販を、従来の新設の太陽光発電システムだけでなく、既存の発電システムにも広げていく。

 「エコめがね」のユーザーのうち、8月に5.1%が発電停止していたという数値は、全国で稼働済みのすべての低圧の太陽光発電システムのうち、約8800カ所の発電システムが停止したことに相当し、遠隔監視がなければ迅速に把握できない。全国で稼働済みの約17万件の低圧の発電システムのうち、約80%は監視システムを導入していないという。