高輝度青色LEDの発明で、赤崎勇氏(現:名城大学)、天野浩氏(現:名古屋大学)、中村修二氏(現:米University of California Santa Barbara校)の3氏が2014年のノーベル物理学賞を受賞した(関連記事)。彼らのどのような成果が、青色LEDの発明に結び付いたのか。青色LEDを構成するGaN系半導体に詳しく、JST ERATOの研究プロジェクト「中村不均一結晶プロジェクト」などで中村氏と共同研究したこともある、東北大学 多元物質科学研究所 教授の秩父重英氏など、国内のGaN系半導体の研究者に話を聞いた。

 その話をまとめると、以下に集約できる。天野氏は、赤崎氏の研究室の出身だ。当時は名古屋大学に所属していた。彼ら2人の研究グループの成果は大きく二つある。1つは、「低温バッファ層」と呼ばれる技術を導入し、サファイア基板上に高品質なGaN結晶を成長させることに成功したこと。サファイアとGaNは、格子定数の差が10%以上と大きいため、高品質なGaN結晶を得にくい。そこで、サファイアとGaNの間に、バッファ(緩衝)層としてAlNを導入し、高品質な結晶成長に成功した。AlN層を、AlNの単結晶を作製する温度よりも低い温度で形成するので、低温バッファ層と呼ばれる。

 もう1つの大きな成果は、p型のGaNの作製に成功したこと。これにより、pn接合が可能になった。こうした2つの成果に加えて、「n型GaNのキャリア密度をコントロールしたのも赤崎氏・天野氏らの大きな成果」(東北大学の秩父氏)である。

InGaNが高輝度化に貢献

 一方、中村氏の成果でよく知られているのが、「ツーフローMOCVD」である。この方法により、良好なGaN結晶を得られるようになった。そして高輝度青色LEDの実現に大きく寄与したとされるのが、「InGaNの研究成果」(東北大学の秩父氏)である。

 結晶欠陥が多いにも関わらず、InGaNを発光層に利用した青色LEDは高輝度に発光する。それは、結晶欠陥で正孔と電子が発光に寄与しない非発光再結合する前に、InGaN混晶内のInとNが集まった「局在状態」の部分に多くの正孔が捕獲され、この正孔と電子が発光再結合して光るためだと考えられている。