2014年10月初旬に本格稼働を開始する予定の植物工場「大阪府立大学グリーンクロックス新世代(GCN)植物工場」は、遠赤色(波長750nm付近)を含めた4色の植物育成用LED(発光ダイオード)照明を活用していることが特徴の1つだ(関連記事、図1)。同植物工場ではこれに加えて、苗選別ロボットや自走式搬送ロボットなどの独自技術を導入している点も注目できる。
「グリーンクロックス技術」で苗の将来性を診断
同植物工場の内部は、大きく「緑化室」「育苗室」「栽培室」などに分かれている(図2)。これらのスペースを育成状況に応じて移動させながら、レタスを生産していく。
まず、緑化室でレタスの種を2日間暗所に寝かせて発芽させた後、白色LED照明を3~4日間当てて幼苗を育てる(図3)。この段階で登場するのが苗選別ロボットだ。幼苗の優良性(将来の生育の良し悪し)を診断し、それが高い優良苗だけを次工程の育苗室へと移す。その結果、収穫時の秀品率が高まって後工程でのロスが減り、生産コストを5%削減できるという。
苗選別ロボットでは、「グリーンクロックス」と呼ぶ技術を活用する。グリーンクロックス技術とは、植物の体内時計をつかさどる遺伝子(時計遺伝子)が植物の生育に強く影響するという知見を基に、時計遺伝子の特性によって育成に優れた個体を判定する技術だ。同大学では2007年からこの技術の研究に取り組んでおり、実証を積み重ねてきた。
具体的には4時間ごとに1日6回、幼苗に青色LED光を照射して葉緑体のクロロフィル色素を発光させ、その蛍光を測定する。蛍光強度などに加えて、固体サイズや形状などのデータを収集し、これらを所定の評価関数を用いて数値化し、苗の優良性を診断する(図4)。そして、優良性によって選別された苗だけを育苗用のパネルに移植するのだ。これらの診断と移植の工程は、全てロボットによって自動的に行われる(図5)。このようなシステムを導入したのは、同植物工場が世界で初めてだという。
次に、優良苗を移植した育苗パネルを育苗室の多段ラック(15段×2つ)に移して、養分を含む水溶液を与えながら14日間、5gになるまで苗を育てる(図6)。この苗を栽培ベッドに定植し、18日間かけて出荷できる状態(80~90g)まで育てるのが栽培室だ。