米国では、多くの10代の若者が、衝突保護性能が低く重要な安全技術が欠如した車を運転している。米保険業界の非営利団体であるIIHS(Insurance Institute for Highway Safety)は、保護者に対するより安全な選択肢の指針として、IIHSが推奨する中古車のリストを発表した。

 IIHSは、通常は新車の安全性を格付けしている。しかし多くの家族にとって安全性の高い新車は予算の範囲外となる。IIHSが10代のドライバーの親に電話調査した結果、83%が子どもの使う車として中古車を選んだことが分かった。調査対象となった500組の両親の43%は、子どもが運転年齢に達したとき、子ども用車両を購入したと答えた。さらに購入した車両は半数以上が2006年モデルより古く、28%が小型車や超小型車だった。また、家族で所有している車両を運転することになると、さらに古い車を運転する可能性もある。古い車には横滑り防止装置やサイドエアバッグなどの安全装置が搭載されていない可能性が高い。

 別の研究では、小型車や古い車両での死亡事故は10代が多い。2008~2012年に小型車や古い車両で致命傷を負ったドライバーのうち、15~17歳が29%、35~55歳は20%だった。

 こうした結果を踏まえ、IIHSの中古車リストは、手ごろな価格で安全性を考慮した中古車を選んだ。このリストは4つの要因を考慮したものである。

(1)高出力エンジンではないこと。強力なエンジンは、その限界を確かめたいという誘惑に駆られる恐れがある。
(2)大きく重い車は衝突時の保護性能が高い。リストにはミニカーや小型車はないが、車両重量が中型車と同等の小型SUVは含まれる。
(3)横滑り防止装置は必須。カーブや滑りやすい路面での車両制御を維持する機能は、シートベルトに匹敵するレベルでリスクを軽減する。
(4)可能な限り最高の安全性評価を受けていること。最低でもIIHSのオーバーラップ前面衝突で「Good」、側面衝突で「Acceptable」の評価であり、NHTSA(National Highway Traffic Safety Administration、米国運輸省高速道路安全局)から四つ星もしくは五つ星の評価を得ていること。

 リストは二つに分かれている。一つは2万ドル以下で、IIHSのオーバーラップ前面衝突、側面衝突、ルーフ強度、ヘッドレストの評価が「Good」であること。NHTSAの評価では全体評価が四つ星もしくは五つ星であるか、前面衝突と側面衝突で五つ星を獲得していること。さらに横滑り防止装置が標準で装備されていることが条件となる。このリストで最も安いのは「Volvo XC90」の2005年モデルで7300ドルだった。

 もう一つのリストは1万ドル以下で、IIHSのテストにおいてオーバーラップ前面衝突で「Good」、側面衝突で「Good」もしくは「Acceptable」の評価を獲得していること。NHTSAの評価では、全体評価が四つ星もしくは五つ星であるか、前面衝突と側面衝突で四つ星か五つ星を獲得していること。また、横滑り防止装置が標準で、ヘッドレストとシートの評価が「Poor」より良い評価であることが条件となる。このリストで最も安いのは2005年モデルの「Saab 9-3」で4000ドルだった。

 価格は、中古車価格情報サイト「Kelley Blue Book」の2014年6月1日の情報を元に、バージニア州Arlingtonで個人中古車販売業者から購入することを想定している。車両は安全評価が適用される最も早いイヤーモデルで、最もグレードが低く、典型的な走行距離、車両状態が良好なものを選んだ。