「柏の葉AEMS(エリアエネルギー管理システム)」を管理する「柏の葉スマートセンター」(出所:日経BP)
「柏の葉AEMS(エリアエネルギー管理システム)」を管理する「柏の葉スマートセンター」(出所:日経BP)
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定格出力1000kWの「電力融通装置」(出所:日経BP)
定格出力1000kWの「電力融通装置」(出所:日経BP)
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蓄電池と電力融通装置を設置したエネルギー棟(出所:日経BP)
蓄電池と電力融通装置を設置したエネルギー棟(出所:日経BP)
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 三井不動産は7月8日、千葉県柏市で開発を進めている「柏の葉スマートシティ」の中核施設である「ゲートスクエア」をオープンした。柏の葉スマートシティは、つくばエクスプレス・柏の葉キャンパス駅の周辺を、高層マンションや商業施設、オフィスビルなど複合的に開発するプロジェクト。ゲートスクエアは、専門店街やオフィス、ホテルのほか、街区全体のエネルギー供給を最適化する「柏の葉AEMS(エリアエネルギー管理システム)」を管理する「柏の葉スマートセンター」などがある。
 
 ゲートスクエアには、屋上に約220kWの太陽光発電システムのほか、隣接するエネルギー棟にLiイオン蓄電池(出力500kW、容量3800kWh)を装備した。公道を挟んだ「ららぽーと柏の葉」には、屋上に約500kWの太陽光発電システムのほか、NaS電池(出力1800kW、容量1万1850kWh)を装備する。

 平常時には太陽光発電の電力を蓄電池に充電しておき、需要ピーク時に放電して電力供給し、東京電力からの受電量を抑える。休日には「ららぽーと柏の葉」の電力需要が大きいため、ゲートスクエアの蓄電池からも自営線を使って「ららぽーと」に電力供給し、平日にはオフィスの多いゲートスクエアの電力需要が大きいため、「ららぽーと」の蓄電池からも自営線を使ってゲートスクエアに給電する。最大で受電量を約26%下げる効果があるという。

 ゲートスクエアと「ららぽーと」の経営主体は、どちらも三井不動産なので、「電力融通」の仕組みを活用して、公道を挟んだ建物への電力供給が認められた。ただ、融通が認められるのは、発電電力だけになる。蓄電池には、非常時に備えて、東電からの受電による充電分も含まれるため、ピークカットのための融通に使えるのは、蓄電量のうち太陽光発電由来の電力分(蓄電割合)に限るという制限がかかっている。

 両建物とも、融通による電力供給を受ける際には、受電点が2つとなる。電力会社の規定により、同一敷地内での複数受電は認められない。そこで、融通する際には「電力融通装置」を介し、交流電流をいったん直流に変換して、再び交流に戻して供給することで認められた。自営線の敷設と電力融通装置など、電力融通のための追加投資分は、その分の契約電力量の減額分で10年弱で回収できるレベルとしている。

 また、非常時に系統電力が停電した場合には、ゲートスクエアには約2000kWのガス発電機も稼働し、通常時の約6割の電力を3日間、継続的に供給できる。また、公道を挟んで隣接する街区の集合住宅には、自営線を使って電力供給し、共有部の非常用エレベーターや照明を稼働できるシステムを構築した。非常時に公道を挟んで電力供給する仕組みは、「特定供給」制度の部分供給スキームを適用することで認められた。

 三井不動産では、将来的に「柏の葉スマートシティ」の開発地域をさらに拡大していく構想を持っており、その際、太陽光発電システムを設置する予定だ。増設した太陽光発電の電力も蓄電池に充電し、自営線を使って隣接街区に融通することも検討しており、そうなれば、ピークカットに使える電源がさらに増える。