登壇した富士フイルム ライフサイエンス事業部長の山口豊氏
登壇した富士フイルム ライフサイエンス事業部長の山口豊氏
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ASTALIFT(アスタリフト)ブランドの製品群
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ヘアケア市場に大きな商機
ヘアケア市場に大きな商機
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ナノテクを活用
ナノテクを活用
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 富士フイルムは2014年6月30日に東京都内で記者会見を開催、40~50歳代の女性を主な対象とするエイジングケア向け化粧品/サプリメントの新製品群を発表した。この中で、従来取り組んできたスキンケアやインナーケアに加え、新たに毛髪ケア(ヘアケア)の市場に参入すると発表した。

 富士フイルムによれば、スキンケアへの関心が高い女性は「肌と同様、髪も美しくありたいという願望が強い」(記者会見に登壇した、同社 ライフサイエンス事業部長の山口豊氏)。実際、国内化粧品市場(約2兆3000億円)のうち、シェア43%を占めるスキンケアに続くのが同23%のヘアケア。その市場規模は約5300億円に及ぶという。特に、育毛剤など女性用スカルプケアの市場は2004年以降の10年間で300%の成長を遂げており、この成長率は全化粧品のうちトップだとする。

 富士フイルムはかねて、「ASTALIFT(アスタリフト)」というブランド名で、エイジングケア向け化粧品/サプリメントの製品群を展開してきた。エイジングケア向け製品カテゴリでは、業界トップ5に入るブランドだという。肌や身体に加え、髪を対象に加えることで、「肌・髪・体をトータルでケアするエイジングケア・ブランドとして業界首位を目指す」(山口氏)と話した。

 今回発表したのは、スカルプエッセンス(頭皮用美容液)、シャンプー、コンディショナーから成る「ASTALIFT SCALP FOCUS(アスタリフト スカルプ フォーカス)」。2014年9月24日に発売する。その開発に当たっては「写真フイルム技術を生かして、“毛髪を科学する”ことを考えた」(富士フイルム 医薬品・ヘルスケア研究所 統括マネージャーの永田幸三氏)という。

 開発した技術は大きく二つある。第1に、「グリチルレチン酸」と呼ぶ育毛有効成分を、粒子径80nmまで微細化した上で膜(シェル)で覆う構造とした「ナノグリチルレチン酸」。これにより、グリチルレチン酸を水に安定して高濃度に分散させられるようにした。この結果、グリチルレチン酸を毛穴の奥まで浸透させられるようになった。

 一般的なグリチルレチン酸は水に溶けないため、従来は溶媒としてエタノールを用いてきた。これに対し、富士フイルムはエタノールが「毛乳頭細胞」と呼ぶ育毛を制御する細胞にダメージを与えることを発見。エタノールを不要にする手法の開発を目指した。今回の技術では、グリチルレチン酸をエタノールに溶かす従来手法に比べて、浸透性を1.7倍に高められることを確認したという。

 第2に、髪の内部に存在し、髪のハリやコシに寄与する「ヒト型ヘアセラミド」と呼ぶ成分を、粒子径20nmまで微細化した上で高濃度に分散させた「ヒト型ナノヘアセラミド」を開発した。

 ナノグリチルレチン酸はスカルプエッセンス、シャンプー、コンディショナーのすべてに配合。ヒト型ナノヘアセラミドはシャンプーとコンディショナーに配合した。