開発した4接合太陽電池(写真:Xing Sheng, University of Illinois、以下同)
開発した4接合太陽電池(写真:Xing Sheng, University of Illinois、以下同)
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太陽電池をトップ・セル側から見た様子
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集光用レンズなどを実装したモジュールの様子。レンズは2段階で利用する。最初のレンズは約2cm角のレンズを貼り合わせたもの。2番目のレンズ(右下に拡大画像)は直径2mmの球状のレンズで、両レンズで併せて1000倍の集光を実現する。
集光用レンズなどを実装したモジュールの様子。レンズは2段階で利用する。最初のレンズは約2cm角のレンズを貼り合わせたもの。2番目のレンズ(右下に拡大画像)は直径2mmの球状のレンズで、両レンズで併せて1000倍の集光を実現する。
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 米University of Illinoisなどは、印刷由来の技術を一部に用いて約1000倍集光時の変換効率が43.9%の4接合太陽電池セルを、高い歩留まり率で作製する技術を開発したと発表した(発表資料)。論文も学術誌「Nature Materials」のオンライン版に掲載された。セルの寸法は650μm角(0.65mm角)と小さい。集光型太陽電池向けで、実際に集光システムと合わせたモジュールの変換効率は36.5%となる。

 開発したのは、University of Illinois、集光型太陽発電システムのメーカーである米Semprius社、同システムに向けた多接合太陽電池メーカーの米Solar Junction社、中国China University of Mining and Technology(中国鉱業大学)の研究者から成るグループである。

 今回の太陽電池の各層の構成は、InGaP/GaAs/InGaAsNSb/Geで、300nm~1700nmという非常に幅広い波長の光を発電に利用できる。具体的な作製手順はこうだ。まず、GaAs基板の上にInGaP/GaAs/InGaAsNSbの3接合素子を作製する。次に、GaAs基板と太陽電池との間のAlInP層をエッチングで溶かし、GaAs基板を容易に剥離できるようにしておく。

 その一方で、pn接合を形成したGe基板上にGaAs層を形成かつパターニングする。そしてその表面に、“糊”の役割を果たすAs2Se3溶液をスピンコート法で塗布する。厚さは10nmと薄い。

 最後に、表面を凹凸加工したシリコーン樹脂「PDMS(ジメチルポリシロキサン)」を、GaAs基板に押し付けて表面の3接合素子をPDMSに転写し、それを今度はGaAs/Ge基板に圧着させることなどで、4接合の太陽電池を形成する。

4接合太陽電池の先陣も貼り合わせで作製

  4接合太陽電池は2013年にドイツFraunhofer Institute for Solar Energy Systems(Fraunhofer ISE)などが開発し、多接合型太陽電池として世界最高効率となる44.7%(297倍集光時)を達成している。Fraunhofer ISEも、ウエハーボンディングという手法で、GaAsウエハー上に形成したGaInP/GaAsの素子とInPウエハー上に形成したGaInAsP/GaInAsの素子を貼り合わせて4接合太陽電池を実現している。

 4接合太陽電池は、格子定数や電流の整合性などから、化合物半導体層すべてをエピタキシャル成長で形成することが容易ではないため、貼り合わせの手法が主流になる可能性が出てきた。

 ちなみに、3接合太陽電池では、シャープが2013年に、変換効率44.4%(307倍集光時)のセルを開発している。

 今回の43.9%はこれらには及ばないが、作製プロセスの一部にゴム判に近い印刷由来の技術やスピンコート法などを用いて、95%以上という高い歩留まり率を実現している点がユニークといえる。