米ファーストソーラーの日本責任者を務めるカール・ブルッツァート氏 (出所:日経BP)
米ファーストソーラーの日本責任者を務めるカール・ブルッツァート氏 (出所:日経BP)
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米国の大手太陽光パネルメーカーのファーストソーラーは、2013年に日本法人を設立し、日本市場の本格的な開拓に乗り出した。同社の主力パネルは、テルル化カドミウム(CdTe)を使った化合物半導体系太陽電池。量産されている化合物系太陽電池の中で、変換効率が高く、生産コストが最も低いといわれる一方、有害物質であるカドミウムを含む化合物を原料にする。特に日本では、イタイイタイ病に代表されるカドミウム汚染の歴史があり、カドミウムに対する心理的な障壁が高い。ファーストソーラーの日本責任者を務める、カール・ブルッツァート取締役(Director, Business Development)に聞いた。

――カドミウムへの抵抗感が大きい日本でCdTe化合物半導体系太陽光パネルが受け入れられるでしょうか。

ブルッツァート まず、カドミウム(Cd)とテルル化カドミウム(CdTe)は異なり、CdTeは、化学的に安定していることを強調したい。また、独立系の認証機関などから信頼性と安全性に関する認証を受けているほか、日本では、東京大学などの研究によって、CdTeを使った太陽光パネルの安全性が証明されている。

 さらに、2005年には、太陽光パネルのリサイクル・プログラムを開始し、太陽光パネルの設置から回収、リサイクルまでのライフサイクル管理を徹底している。日本のユーザーや投資家も、こうした事実を示し続けていくことで、理解を得られると考えている。

――これまでの実績などを教えて欲しい。

ブルッツァート 全世界で設置済みの太陽光パネルは1億枚以上あり、その合計出力は8GW以上となっている。この中には、太陽光パネルの供給だけでなく、EPC(設計・調達・建設)サービスまで担ったものもある。

 EPCサービスについては、建設中のプロジェクトが合計出力3GW分ある。メガクラスの太陽光発電所のEPCやO&M(運用・保守)では、世界最大の企業となっている。

 2013年4月には、米TetraSun社を買収した。同社のパネルは、結晶シリコン型でありながら、温度係数が低いために気温が高い時期でも高い出力を維持できる。設置面積に限りのある、屋根設置型のシステムに最適である。

 太陽光パネルの生産のほか、生産から施工、運営・保守など太陽光発電全般を網羅した垂直統合型の事業モデルを生かすことで、太陽光発電のコスト競争力を、既存の発電源と同等まで高めていきたい。

――垂直統合型の事業モデルによって、発電事業者にはどのような利点があるのか。

ブルッツァート プロジェクト全体を最適化してコストを下げやすくなる上、すべての段階のリスクを把握できるので、長期的に信頼性の高い発電所を実現できる。投資家にとって、魅力的な投資先となるだろう。

 手元資金が厚い強みもある。2013年に、2回目の新規株式発行によって、4億3000万ドルを市場から調達した。調達した資金は今後、新たな地域でのメガソーラー建設プロジェクトに投じていく。

――日本でも、太陽光発電所の建設に参入し、約100億円を投じると発表した。日本市場をどのように見ているのか。

ブルッツァート 電源構成の中で、太陽光が重要な役割を果たすようになるとみている。東日本大震災以降、原子力が減り、その分を、火力発電で補っている。化石燃料の輸入への依存度が高すぎる状況にあり、安全保障上、化石燃料に頼らない電源が重要になっている。

 原子力発電の一部は運転を再開すると予想しており、火力発電の重要性も変わらないが、燃料調達やコストに左右されない太陽光発電が将来、エネルギー価格を安定させるだろう。

 太陽光発電に長期的なニーズのある国に投資しており、日本にはそれがある。メガソーラーを開発するほか、日本ならではのユニークな応用や市場環境にあった技術を開発していく。

 経済産業省から設備認定を受けながら、建設に至っていない案件にも注目しており、垂直統合型の事業モデル、資金力を活用することで、実現させたい。