2009年8月に策定した「長期エネルギー需給見通し(再計算)」のシナリオ(出所:経済産業省)
2009年8月に策定した「長期エネルギー需給見通し(再計算)」のシナリオ(出所:経済産業省)
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 政府は4月11日、新しい「エネルギー基本計画」を閣議決定した。最大の特徴は、2012年9月に、当時の民主党政権が決めた「革新的エネルギー・環境戦略」に盛り込まれた「2030 年代に原発稼働ゼロ」という方針が転換され、「重要なベース電源」と明記されたことだ。 とはいえ、「原発依存度については、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化などにより、可能な限り低減させる」と、“縮原発”の方向性も明示した。

 一方、再生可能エネルギーに関しては、「2013年から3年程度、導入を最大限加速していき、その後も積極的に推進していく。そのため、系統強化、規制の合理化、低コスト化等の研究開発などを着実に進める。このため、再生可能エネルギー等関係閣僚会議を創設し、政府の司令塔機能を強化するとともに、関係省庁間の連携を促進する。こうした取組により、これまでのエネルギー基本計画を踏まえて示した水準を更に上回る水準の導入を目指し、エネルギーミックスの検討に当たっては、これを踏まえることとする」との言い回しによって、「政府を挙げて導入を加速」という姿勢を強調した。

 他の電源の導入目標がまったく示されない中、再生可能エネルギーだけは、「これまでのエネルギー基本計画の水準を更に上回る」とし、参考値として、「2020年に1414億kWh、2030年に2140億kWh」(水力を含む)を例示した。参考値とは言え、再エネだけ、目標値の最低ラインを示したことは、大きな意義がある。ただ、2012年の「革新的エネルギー・環境戦略」に示した再エネ導入目標である「2030年までの3000億kWh(水力を除いた場合、1900億kWh)」に比べると、やはり後退したイメージは拭えない。

 2012年度における再エネ電源の発電実績は、約940億kWh(水力を除くと約150億kWh)になる。このうち太陽光の発電量は導入設備(約727万kW)から推定すると約19億kWhとなる。参考値と示した「2020年1414億kWh」は、2009年8月に策定した「長期エネルギー需給見通し(再計算)」の数値で、その際の太陽光の内訳は約311億kWhだった。これを設備利用率から逆算すると、約2730万kWの太陽光発電設備になる。つまり、2020年の最低ライン達成には、2012年度の3.75倍の容量が必要になる計算だ。

 実は、これはある程度、見えている数値だ。2013年12月末時点で設備認定済みの太陽光は2838.1万kW。経産省による「報告の徴収」の結果から、設備認定のうち約6割は稼働可能性が高いとすれば、2838.1万kWのうち約1700万kWは実現することになる。固定価格買取制度(FIT)前に導入済みの約560kWと合わせると約2260万kWに達する。

 ただ、逆に言えば、今後、買取価格を一気に下げてしまうと、これ以上の大幅な積み上げは難しいともいえる。再エネ導入目標として「2020年1414億kWh」に大幅に上乗せしたり、「2030年に2140億kWh」を見据えれば、さらなる政策的なテコ入れが必要になる。2015年度以降の買取価格を決める議論を深めるためにも、再エネ目標の明確化が望まれる。