カンファレンスの様子。登壇者は北村彰氏
カンファレンスの様子。登壇者は北村彰氏
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 新日本有限責任監査法人は2014年3月13日、「第2回 ヘルスケアベンチャーカンファレンス」を東京都内で開催した。テーマは「デジタル・ヘルスケアベンチャー飛躍のための資金調達と事業展開の秘訣」。医療とITの融合領域で事業を行っているベンチャー企業(デジタル・ヘルスケアベンチャー)の資金調達や事業展開の動向について、4人の講師が講演した。

 このうち、デジタル・ヘルスケアベンチャーへの投資案件やIPO(株式上場)の動向に関する調査結果を披露したのが、ジャパンベンチャーリサーチ 代表取締役の北村彰氏である。同社はベンチャー企業約7000社を対象に、業種別の資金調達の動向などを調査している。講演タイトルは「日米デジタル・ヘルスケアベンチャーの資金調達動向と今後の展望について」。

 北村氏によれば、米国ではここにきてデジタル・ヘルスケアベンチャーへの投資が活況を呈している。2013年におけるデジタル・ヘルスケアベンチャーへの投資額は前年比39%増となり、2011年比では2倍以上に達した。投資件数ベースでも2013年は前年比38%増で、2011年比では2.3倍となった。ベンチャー・キャピタルのプレーヤーも増加中である。

 特に投資案件が増えている分野は、電子カルテや臨床ワークフロー、ビッグデータ分析、ウエアラブルデバイスだという。これらの技術にかかわる企業が集積するSilicon Valleyでの資金調達事例が多く、クラウドファンディングが増えているのも特徴だとした。

予想の3倍の参加申し込み

 対して日本では目下、デジタル・ヘルスケアベンチャーへの投資はほとんど伸びておらず、米国とは投資熱に温度差のある状況だという。日本におけるデジタル・ヘルスケアベンチャーのIPO件数は、直近では年間1件にとどまっている。

 北村氏は、デジタル・ヘルスケア分野は高齢化などの社会問題をテーマとするだけに意義は大きいものの、市場規模を大きくしにくいことが課題とみる。そのため、この分野でベンチャーを立ち上げたり育成したりするに当たっては、拡張性(スケーラビリティ)のある事業をグローバルに展開できるような設計が重要だと話した。

 この他、今回のカンファレンスでは「欧州ルクセンブルクのヘルスケアベンチャー支援策とケーススタディについて」、「デジタル・ヘルスケアベンチャーによる資金調達の体験談とポイント」、「クラウド活用によるデジタルヘルスケア事業展開について」と題する講演が行われた。同カンファレンスはもともと60人前後の参加を見込んでいたが「予想の約3倍に当たる170人の申し込みがあった」(新日本有限責任監査法人)という。