山口大知的財産センターによる報告講演のスライド
山口大知的財産センターによる報告講演のスライド
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 山口大学は、平成25年度(2013年度)から全学部で知財教育を必修科目とした1年間を総括する「知財教育シンポジウム」を2014年3月10日に東京都港区で開催した。全学部での知財教育の必修科目化は山口大学が初めて。

 山口大学は全学部の1年生約2000人全員に対して、平成25年度から各学部(7学部)に「知財入門」の授業を必修科目として導入し、その教育効果などを分析した。講義の第1回目に「知財教育の全体像」をイントロダクションとして教え、「著作権・コンテンツ」「物作り系知財」「研究論文執筆時の引用の仕方」「個別の企業事例」などを順番に教えるシラバスを作成した。

 1年目では学部の教育内容を考慮し、講義の後半の2回分は学部ごとに講義内容を変えた。しかし、「1年生には基礎部分を教えるので、学部ごとにいくらか変えるカスタマイズをする必要はなかったと現時点では分析している」(山口大学 知的財産センター 副センター長・教授の木村友久氏)と、1年間の講義内容を振り返って報告した。

 当初、人文学部や経済学部の学生には著作権・コンテンツや意匠権などを多めに教える分、特許などの講義量を少なめにするアレンジを加えたという。逆に、工学部の学生には、特許についていくらか多めに教えるアレンジを加えた。しかし1年目の講義を実施して「全学部の1年生には共通した基盤知識を教え、2~4年生に教える知財教育講義でアレンジした方が効果的ではないかと現時点では分析している」(木村氏)という。最近は工学部を卒業して企業に就職すると、著作権や意匠権などの知識を使って仕事をすることが、製品開発や事業推進の部門を中心に増えているからだ。

 各講義では、講義を通して知ったことや考えたこと、分からなかった疑問点などを独自のワークシートに記入させた。これを通じて学生の理解度を測り、疑問点に対しては翌週の講義までにウェブサイトに答えを載せるなどの工夫をこらした。これによって受講生の理解度を把握する手法を取り入れている。また、講義映像を記録し、DVDに映像・音声を保存し、翌年度の学生や他の教員が講義内容を理解できるツールを整備した。

 山口大学では、知的財産教育を学部4年間、さらには大学院でも積み上げていく全学部・全研究科での知財教育実施を計画している。これによって、専門基礎力と併せた知財教育によって創造性を高めることを狙う。加えてパテントマップ(特許内容などのグループ化や位置づけ)を作成し利用することなどによって、研究テーマの位置づけなどを学び、専門能力の向上を目指すなど、知財の実務力向上を図る。その上で、知財戦略などをつくる実務力向上を図ることなどを計画している。