【図】農業IT化市場規模予測(単位:億円)
【図】農業IT化市場規模予測(単位:億円)
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 市場調査・コンサルティング会社のシード・プランニング(本社東京)は、2013年に実施した農業IT化に関する調査結果の概要を2014年1月9日に発表した(ニュースリリース)。農業IT化の2013年の市場規模は66億円だったが、2020年にはその約9倍となる580~600億円になると予測。中でも、農業クラウドサービスが2013年比で約28倍と大きく拡大し、農業IT化市場の75%を占めるとしている。

 農業IT 化とは、ITを駆使して農産物の生産・販売に必要な情報を収集し、効率的に農産物を生産して販売・流通させる技術。この調査では、農業IT 化を[1]GPSガイダンス、[2]センサ・ネットワーク/環境制御装置、[3]農作業ロボット、[4]直売所POSシステム、[5]農業クラウドサービス、の5 カテゴリに分けて実施した。

[1]GPS ガイダンスは、GPS を用いた農業機械のガイダンスシステムや自動操舵システムのこと。GPS ガイダンス市場は、2020 年で15 億円前後と予測する。2012 年度の農業用GPS ガイダンスシステムなどの出荷台数は910 台、自動操舵システムは140台の計1050 台だった。2008 年度以降の累計出荷台数は2340 台で、国内出荷のうち9割が北海道向けに出荷されているという。特に2011 年度から自動操舵装置の出荷台数が大きく伸びており、農耕地の大規模集約化が進展(農地集積基盤整備事業)するとともに、人工衛星「準天頂衛星」などのインフラの整備で実証試験段階から実需に進んでいる。

[2]センサ・ネットワーク/環境制御装置は、センサ技術を用いて圃場・栽培施設の温度や湿度、養分、土壌などの情報を取得し、生育に最適な環境を自動制御して栽培の自動化を図るもの。現在、環境制御向けセンサ・ネットワークの導入可能な国内の施設数(潜在ニーズ)は、およそ7000~8000 施設。環境制御・センサ・ネットワークは 2007~2008 年頃から市場に投入され、2010~2012年には先進的取り組みの農業事業者に導入されて、ようやく市場で認知・活用されるようになった。累計市場規模は2012 年で10 億~11 億円規模(単年では3 億~3.5 億円規模)にとどまっている。2015 年には4~5 倍の成長が見込め、10 億~12 億円規模、2020 年には現在比10 倍の35 億円前後に拡大すると予測した。

[3]農作業ロボットには、自動選別装置などに代表される農作業自動化装置やパワーアシストスーツなどが含まれる。農作業ロボットは 10 年以内の実用化を想定した。農機具の1割が農業ロボットに置き換わると想定して、2020 年の市場規模は50 億円前後と予測している。

 [4]直売所 POS システムは、直売システムにおける効率的な集出荷の管理、販売手数料などの精算管理を行い、農産物流通の効率化を図るシステムだ。直売所施設は飽和状態といわれながら、この2~3 年、順調に施設数は増えている。道路施設「道の駅」も同様に増えており、新しい業態での直売所も出現。サービスは多様化し、地域活性化のコア施設として機能してシステムの導入が図られている。2015 年以降は飽和状態になり、産直POS システムの新規導入は鈍化するが、新たなシステムにより、付加価値サービスなどの機能を付けた更新需要がメインになると予想される。市場のピークは今後 2~3 年、2017 年以降はリニューアル更新需要となり、2020 年の市場規模は55 億円前後となる見込み。

[5]農業クラウドサービスは、経営分析や生産技術、販売、物流、融資などの情報を農産物生産者へ提供し、地域振興を図るために自治体などが主体となって構築するクラウドサービスである。基盤構築や各サービスの提供を行う主要なICTベンダ4社(富士通、NEC、日立ソリューションズ、アグリコンパス)の現況と今後の事業計画から推定すると、2015 年時には200 億~250 億円の市場規模が形成されることになる。

 現状の各社のクラウド運用サービス数と、市場算定の母数となる農業法人事業体数や普及限界率などを勘案すると、2020年には、栽培技術・栽培管理・経営管理関連で210 億円前後、トレーサビリティー関連で200 億円前後、産直販売関連で30 億円前後、計440 億円前後の需要が見込めると予測した。

調査は、調査対象企業(農業クラウドサービス/GPS ガイド・自動操舵/農業用センサで20社、産直 POS システムで11社)に対し、訪問による面談と電話による聞き取りを実施した。調査時期は2013 年7~11 月である。

 なお、本調査結果の詳細は、同社が2013年11月30日に発行した「農業IT化最前線レポート 農業をビジネスに変えるIT化技術と企業 2014年度版」(価格:12万円+税)に掲載されている。