講演するルネサンスエコファーム 社長の中村鉄哉氏(撮影:日経BP)
講演するルネサンスエコファーム 社長の中村鉄哉氏(撮影:日経BP)
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図1●視点を変えて収益の源に(撮影:日経BP)
図1●視点を変えて収益の源に(撮影:日経BP)
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図2●送電線が敷かれていない中山間地域で電力自立型農業を計画(撮影:日経BP)
図2●送電線が敷かれていない中山間地域で電力自立型農業を計画(撮影:日経BP)
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 農作物による収益だけで家計を支えていくことが困難になりがちな現在の農業。田畑の上に太陽光パネルを設置し、固定価格買取制度を活用した売電事業を併営するソーラーシェアリングは、収益力に乏しくなりがちな農業を、多重収益型のビジネスモデルに変える可能性がある。このソーラーシェアリングによるメガソーラー(大規模太陽光発電所)の可能性を視野に入れるルネサンスエコファーム 社長の中村鉄哉氏が、国際農業資材Expo(10月9日~11日開催)において講演し、その取り組みを紹介した。

 ルネサンスエコファームでは、農作物の育成に必要な日射量を確保しながら、農地の上に太陽光パネルを設置するためのシステムを開発しており、このシステムを使って、山口県防府市にある同社の面積770坪(約2500m2)の農地において、6月から売電を開始している。最大出力は約250kWで、「約8000万円の投資で、初年度から年間約1000万円の売電収入を得られる見込み」(中村氏)。

 中村氏が開発したソーラーシェアリング向けの発電システムは、農作物の育成に必要な日射量を確保しながら、農地の上に太陽光パネルを設置するものである。田畑に光を取り込むためのすき間を空けながら、太陽光パネルを並べる。このすき間の寸法は、育成する農作物の特性などによって調整する。同社のソーラーシェアリング果樹園では、梅やオリーブ、ハーブやイチゴなどを栽培している(このソーラーシェアリング果樹園については、10月15日公開のメガソーラー探訪で詳細を紹介)。

 この隣接地では、放し飼いによる養鶏と太陽光発電をシェアリングしており、ここでは中村氏が経営するうどん店で排出される食物残さを餌とし、食料として消費されなかった農作物が、ニワトリの餌として、卵や肥料を生み出す原料となるなど、有機物の自然循環を活用しているとする。

 「ソーラーシェアリングの最大の利点は、地方の農村都市における高齢化に伴う問題の解消や、農業を活性化できること」にあると、中村氏は強調した。売電事業による収益の拡大によって、農業へのモチベーションが向上し、耕作放棄地が増えている問題の解消につながる。さらに、生きがいの発見による高齢者の健康の増進、食の自給率の向上、地方の農村都市の活性化によって、多極分散型の社会に日本が進化する契機になるとする。

 耕作放棄地を収益源に変える上で重要となるのが、「除去の手間が苦痛だった雑草を養鶏における新鮮な飼料にしたり、炎天下の太陽光が生み出す電力の売電など、従来は苦痛と考えられてきた要因を、視点を変えて収益の源とすること」(中村氏)という(図1)。

 また、今後の計画として、送電線が敷かれていない中山間地域において、蓄電池を備えたソーラーシェアリングに取り組む(図2)。ミカンや柿、イチジク、ブルーベリーを栽培する果樹園と、放し飼いのニワトリによる自然卵養鶏場を一体化した太陽光発電所で、発電した電力は売電せず、このソーラーシェアリング内で使う。狙いは、電線が通じていない地域の農地のモデルの確立にあり、すでに建設を開始したという。