液晶ディスプレイの色再現性の課題を解決できる技術として注目を集める、量子ドットの動向に関するセミナー「次世代ディスプレイと照明を変える『量子ドット技術』開発最前線」が、10月2日に東京で開催された。量子ドットを製造する英Nanoco社、ドイツNanosys社、米QD Vision社の世界の主要メーカー3社のCEOやCTOが直接、各社の量子ドット技術の内容や事業戦略を語った。各講演の内容が濃く、今後の量子ドットの動向を知ることができたので、各社の講演内容のポイントをレポートする(各講演者の経歴など)。

Cdフリーの技術でDow Chemicalと組んだNanoco

 最初の講演者であるNanoco社のFounder&CTOのNigel Pickett氏は、まず同社のコア技術である、毒性元素のCdを全く含まない「CFQD」(Cadmium Free Quantum Dots)の製造方法や製品の特徴を紹介した。量子ドットそのものの生産量は、現在は研究開発レベルから少量の量産レベルに拡大させつつあるが、まだ年産数kgのオーダーにとどまっている。今後、液晶パネルを中心に拡大が期待される市場のニーズに応えるためには、大規模な生産体制が必要であり、そのために米Dow Chemical社と排他的なライセンス契約を結んだことを明らかにした。同社が持つ化学分野での生産力とサプライ・チェーンを生かして、今後の市場拡大に備える戦略である。

 量子ドットを液晶ディスプレイに実装する方法は三つある。(1)青色LEDチップに直接量子ドット材料を載せる「On-Chip」、(2)量子ドットを細いガラス管に封じ込めてバックライト用導光板のLED光入射部に置く「On-Edge」、(3)量子ドットをフイルムに挟み込んでシート状にしたものをバックライトと液晶パネルの間に敷く「On-Surface」、の三つである。Nanoco社は量子ドット材料の安定性や液晶パネルへの組み込みやすさから、(3)のOn-Surface方式を採用し、市場獲得を目指すとしている。

 また、照明分野への応用について、LEDの前面に置くレンズに「CFQD」を適用することで、高い演色指数の照明を得られることもPickett氏は紹介した。