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本記事は、デジタルヘルスOnlineのコラム、趙章恩の「韓国スマートヘルスケア最前線」からの転載です

 世界最大のコンシューマーエレクトロニクスショー「IFA2013」の前日である2013年9月4日、ドイツ・ベルリンで韓国Samsung Electronics社の新製品発表会が行われた。発表会の主役は、「GALAXY Gear」だった。

 GALAXY Gearは、腕時計型の端末。スマートフォンやタブレット端末と連動して日常生活をより便利にするというもの。カラー・バリエーションも豊富だ。2013年9月中旬以降、世界140カ国で販売する予定である。

 今回公開した“バージョン1”は、米Apple社よりも先に腕時計型端末を公開する目的が強かったようだ。機能とデザインを補い、2014年1月に米国ラスベガスで開催される展示会「CES」において“バージョン2”を公開するという噂が絶えない。

 GALAXY Gearは、音声認識による電話やメール、スケジュール・天気確認、アラーム設定といった基本機能はもちろん、同端末でメールのタイトルを読んでスマートフォンを取り出すと、何の操作をしなくてもすぐ該当するメールの本文がスマートフォンの画面に登場するといった「スマートリレー」機能も搭載している。スマートフォンをどこに置いたのか忘れてしまった場合、GALAXY Gearを使ってスマートフォンに音を鳴らすなどして探せる機能もある。

 GALAXY Gearの画面は1.63型と小さいが、「Super AMOLED」のためか画質がきれいで文字も見やすい。190万画素のカメラ付きなので、風景や時刻表などを撮影してメモ代わりにもできるのは便利だ。動画も10秒間撮影できる。

 カメラで写真を撮って電源ボタンを3回押すと、あらかじめ設定しておいた緊急連絡先に位置情報と一緒に写真を送信し、緊急事態であることを知らせることもできる。高齢者や子供に買ってあげたい端末と言える。

 Samsung Electronics社は、GALAXY Gear向けに「Line」や「Kakao」といったSNSを始め、70種類ほどのアプリケーション(以下、アプリ)を用意していると発表した。基本的には10種類ほどプリインストールして、その他は「Samsung apps」という同社が運営するアプリ・マーケットから好きなアプリをダウンロードする格好になる。米国で人気のフィットネス・アプリ「RunKeeper」「MyFitnessPal」も使えるという。GPSを使って、自分のランニングやウォーキング、サイクリング、ハイキング、マウンテンバイキングなどを追跡・記録することができるアプリだ。

専用のヘルスケア・アプリの開発も進む


 韓国ではGALAXY Gearを使ったヘルスケアに注目が集まっている。GALAXY Gearは動きを感知するセンサを搭載しているので、Samsung Electronics社がスマートフォン「GALAXY 4」向けに提供しているヘルスケア・アプリ「Sヘルス」や胸に付けるバンドと連動した心拍計、体重計と連動したダイエット管理といった機能も一通り利用できるように準備しているという。前述したスマートリレー機能を使って、GALAXY GearとGALAXYスマートフォンのアプリが連動するので、より楽にヘルスケア機能を利用できるようになりそうだ。

 韓国では健康な人をより健康にする「ウエルネス市場」が注目を浴びている。実際、さまざまな病の原因になるとされる肥満を予防するため、男女老若がダイエットに励んでいる。ダイエット食品やフィットネスジム、合宿型断食、針や漢方薬で脂肪を減らす韓方エステなど、方法は数えきれないほどある。韓国メディアの報道によると、韓国のダイエット市場規模は年間2兆ウォン(約2000億円)前後だという。人口約5000万人の国でダイエットだけに年間2000億円も使っているとは相当な市場規模である。最近はスマートフォンの普及にともない、無料あるいは数百円程度で利用できるフィットネス・アプリや、血圧や血糖値、食事内容を記録すると生活アドバイスがもらえるヘルスケア・アプリが人気を集めている。

 腕に着けるGALAXY Gearは、スマートフォンよりも細かく正確に生体情報をチェックでき、個人の健康状態に合わせてどうすれば肥満を予防できるのかより的確にアドバイスできる可能性がある。内蔵する動作感知センサをうまく活用したヘルスケア・アプリも開発が進んでいるため、GALAXY Gearのヘルスケア機能に対する期待は高まるばかりである。

 GALAXY Gearの最大の弱点は、電池の持ちがよくないことである。仕様としては充電して25時間は連続使用できると書いてあるが、実際にあれこれ機能をフルに使うと電池はすぐ消耗してしまう。そのため、韓国では端末を着用したまま充電する技術や大きくて薄くて腕の曲線に合わせて曲がるフレキシブル・ディスプレイ技術が、今後ウエアラブル端末を利用したヘルスケア・サービス市場の重要な鍵になると見ている。