京セラが開発した「ピエゾフィルムスピーカー」の大中小品
京セラが開発した「ピエゾフィルムスピーカー」の大中小品
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同スピーカーを実装したLG Electronics社の「曲面型有機ELテレビ」。
同スピーカーを実装したLG Electronics社の「曲面型有機ELテレビ」。
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京セラによるデモ用スピーカー
京セラによるデモ用スピーカー
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従来型スピーカー(左)と、今回のスピーカー(右)の構成の違い
従来型スピーカー(左)と、今回のスピーカー(右)の構成の違い
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今回のスピーカーで音声が出る様子
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指向性の比較
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大中小型品の音声特性と想定する適用用途
大中小型品の音声特性と想定する適用用途
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 韓国LG Electronics社の日本での研究開発拠点であるLG Electronics Japan Labと京セラは2013年8月29日、共同で会見を開き、京セラが超薄型の「ピエゾフィルムスピーカー」を開発したこと、そしてそれがLG社が韓国などで発売した55型の曲面型有機ELテレビに実装されていることを発表した。

 LG社の同テレビは、テレビ前面の左右下の筐体部分に一部が透明の「Clear Speaker」を備えている(関連記事)。LG社は、発売前から同テレビの特徴の一つとしてアピールしていたが、それが京セラ製であることが明らかになった。

 このスピーカーは、ピエゾ(圧電)素子を透明なフィルムに貼ることで、実現したもの。「ピエゾ素子の材料は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)をベースに、いくつかの材料を加えて所要の特性を実現したもの」(京セラ 取締役 執行役員常務 自動部品事業本部長の触浩氏)とする。

 スピーカーは大中小の3種類ある。大型品は、寸法が70mm×110mm×1.5mm、中型品は35mm×65mm×1.0mm、小型品は19.6mm×27.5mm×0.7mm。これらのうち、LG社の有機ELテレビに採用されたのは、中型品である。

 京セラは、これらのスピーカーの特徴は大きく三つあるとする。第1の特徴は、超薄型で軽量であること。重さは、上記の大型、中型、小型でそれぞれ23g、7g、1g。厚さも1mm前後で「磁石を用いた従来型スピーカーの1/20~1/30」(京セラ)であるという。

 第2の特徴は指向性が弱いこと。指向性が正面方向に偏る従来型スピーカーに対して、今回のスピーカーはスピーカーの前面±90°方向にほぼ同じ強度で広がるとする。

 第3の特徴は、非磁性かつレアアース・フリーであること。周辺の電子機器に強い磁界で悪影響を与える心配や、材料の安定供給の心配がないという。

 これに加えて、音響性能でも、中高音域は従来型スピーカーに比べて透明度、明瞭感、そして臨場感に優れるという。「指向性が弱いことで、雨音や拍手などの再生能力が高まった」(京セラ)。

 一方、課題もある。「実績がないこと。そして、低音が出にくいこと」(京セラ)。実際、今回のスピーカーの再生周波数帯域は、大型品が200Hz~20kHz、中型品が500Hz~20kHz、小型品が800Hz~20kHzで、中小型品は人間の低い声(200~300Hz)の再生が難しくなる。

 この点、LG社の有機ELテレビは、背面に従来型スピーカーを内蔵している。これで低音領域の課題をカバーしているもようだ。

 京セラは今後、この超薄型スピーカーをテレビの他、スマートフォンやタブレット端末、そして車載スピーカー向けなどに幅広く展開する考え。「2014年度には100万個、(5年後の)2018年度にはその10~20倍の出荷量で100億円規模の売り上げを目指したい」(京セラ)という。

 一方、LG社は、この55型の曲面型有機ELテレビの日本での発売は現時点では決めていないとした。「この有機ELテレビはフルHDだが、日本で売るなら4Kの製品にした方がよいかもしれない。その場合、発売は(4K対応の製品が出る)来年以降になるだろう」(LG Electronics Japan Lab代表取締役の尾上善憲氏)。