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ナレッジキャピタルの宮原氏

 介護現場のニーズと介護向けの技術シーズをマッチングさせるための研究・開発・創造拠点が、2013年8月1日に開設する。有料老人ホームの運営などを手掛けるオリックス・リビングによる「オリックス・リビング イノベーションセンター」である。

 同センターは、JR大阪駅近くのうめきた・グランフロント大阪の中核施設「ナレッジキャピタル」(一般社団法人ナレッジキャピタルが運営)に内に設置。

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実際の浴室を再現

 オリックス・リビングが運営する有料老人ホーム「グッドタイムリビング」の実際の居室・浴室を再現し、実際の介護現場で発生している課題について企業や研究機関と共有し、機器の開発や実証試験を進める。

 一般社団法人ナレッジキャピタル 代表理事の宮原秀夫氏は、「介護向け技術はこれまで、技術オリエンテッドのものが多かった。本当にユーザーが望んでいる技術を創造していける場所になる」と期待を込める。

オリックス・リビングの施設への先行導入も

 オリックス・リビング イノベーションセンターでは既に、次の6社の介護向け技術の開発・実証を進めることが決まっている。

・NKワークス:「3次元電子マットによる見守りシステム」
・国際電気通信基礎技術研究所(ATR):「高齢者の見守り・移動支援サービス」
・トヨタ自動車:「移乗ケアアシストの実証」
・マッスル:「非装着型移乗支援介護機器の実証」
・ミズノ:「高齢者を対象とした商品・サービスの研究・実証」
・ 村田製作所:「温湿度センサシステム・センサ連動型照明無線制御システム」

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オリックス・リビングの森川氏

 オリックス・リビング 代表取締役社長の森川悦明氏は、「当社が得ている介護現場のノウハウと、技術提供企業のテクノロジーを組み合わせることで、介護現場に新たな価値を提供する」と語る。センター内に再現した有料老人ホームの居室・浴室などを用いて、介護従事者の動きを確認しながら企業と実証を進める他、実際にオリックス・リビングが運営する有料老人ホームに企業を案内する機会も提供するという。

 オリックス・リビングとしては、技術を持ち寄る企業の考えや技術開発の進行度合いなどに応じて、「共同開発」や「場所の提供」などさまざまな形態で「柔軟に」(同社の森川氏)連携していく考え。センターで実証した技術を、先行して同社が運営する有料老人ホームなどに導入していくことも視野に入れているという。

「センサ+通信」のシステムを提案する村田製作所

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村田製作所のシステムのデモの様子

 オリックス・リビング イノベーションセンターでの実証を進めることが決まっている6社のうち、村田製作所は同センターで検証を進めるセンサと通信の融合システムについて同日発表した。

 920MHz帯の無線通信を利用した「温湿度センサシステム」と「センサ連動型照明無線制御システム」である。同社が保有するセンサ技術と無線通信モジュール技術を組み合わせることで、介護現場の課題解決を目指す。

 温湿度センサシステムは、温湿度データをモニタリングすることで「隠れ熱中症」の予防や早期発見などを狙うもの。具体的には、室内に温湿度センサと無線通信モジュールを組み合わせた「温湿度センサシステム」を設置し、集中管理室への設置を想定したパソコン上に各部屋の状態を表示する。しきい値を超えるとアラームが鳴る仕組みになっており、高い温湿度が影響するとされる隠れ熱中症の早期発見・予防に利用する。

 センサ連動型照明無線制御システムは、照明の切り忘れ防止などを狙うもの。広い施設内の共有部にある照明の点灯・消灯作業をスタッフが巡回することなく、無線通信によって一括で制御できるようにする。これにより、スタッフが巡回して操作する手間・時間を削減する。