ヘルスケア産業注)に新規参入する企業の海外進出などを支援する――。こう標榜する組織が、2013年4月に始動した。神奈川県が開設した、ライフイノベーション国際協働センター(GCC:Global Collaboration Center for Life Innovation)である。

注)ここでのヘルスケア産業とは、医療機器や個別化医療、次世代のヘルスケア・システムなどを含めた広義の意味である。

宮田喜一郎

 開設時の会員には、味の素、コニカミノルタ、ソニー、日立製作所、富士フイルム、神奈川科学技術アカデミー、実験動物中央研究所が名を連ねた。いずれも、ヘルスケア事業の拡大を狙う企業・団体だ。

 神奈川県は、2011年12月に国に指定された「京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区」を軸に、ヘルスケア関連企業の集積と同産業の創出を進めている。GCCは、こうした取り組みの一翼を担うもので、同県知事 黒岩祐治氏の肝入りの組織。代表理事には、2013年初まで内閣官房 医療イノベーション推進室の室長を務めていた松本洋一郎氏(東京大学 教授)を迎えた。

 このGCCの取り組みの内容や今後の展開などについて、神奈川県 政策局 政策部 国際戦略総合特区推進課 課長の山口健太郎氏と、同課長代理の杉山力也氏に聞いた。

(聞き手は小谷 卓也)


――ヘルスケア産業に新規参入する企業の海外進出を支援する狙いは。

 アジアを中心に、ヘルスケア市場は世界に大きく広がっていく。しかし、これからヘルスケア産業に参入しようとする企業が、いざ海外展開を進めようとしても簡単にはいかない。コンタクト先、窓口を持っていないからだ。そのため、新規参入企業が海外展開を円滑に進められるように支援することが大事になる。

――具体的には、どのような支援をするのか。

宮田喜一郎

 GCCのアドバイザーとして、元・米FDA(食品医薬品局)の次官を招聘した。彼は、世界各国・地域に、幅広い人脈を有している。この人脈を生かして、どこに何を持っていけばよいのか分からない企業に対してアドバイスをしてもらう。この人脈こそが肝だと考えている。

――海外進出の支援の他に、手掛ける業務は。

 まだ開設したばかりなので、実際にはこれからだが、例えば、次世代のヘルスケア・システムにおける重要なテーマについて、国際共同研究を展開したい。さらに、次世代のヘルスケア産業のリーダーになり得るような人材の育成も進めたい。新たな医療ビジネスのモデルや国際展開などに関する政策提言まで踏み込むことも考えている。

――これらGCCの取り組みは、会員のみに対して進めていくものと考えてよいか。

 基本的にはそうだ。会員は年間500万円弱の会費を払ってもらう。会員の要望を個別に聞きながら、会員個別に作業を進めていく考えだ。ただし、個別の取り組みの中で培ったノウハウなどを横展開して、活動の幅を広げることはやっていきたい。

――会員は今後、どのように増やしていくのか。

 既に会員になっている味の素、コニカミノルタ、ソニーなどは、神奈川県から声を掛けて、開設当初の会員になってもらった。今後は、20~30社まで会員を増やしていきたい。ただし、簡単に増えないことは分かっている。まずは、当初の会員にGCCを活用した具体的な成果を出してもらって、その成果に興味を持つ企業などを増やしたい。会員は、決して神奈川県内に事業所などを持つ企業・団体に限定していない。もちろん、結果的に特区(京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区)に進出することになればありがたい。