スマートソーラーインターナショナル 代表取締役の富田孝司氏
スマートソーラーインターナショナル 代表取締役の富田孝司氏
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 東京大学発のベンチャー企業であるスマートソーラーインターナショナルは、ミラーで光を集める集光システム搭載の太陽電池モジュールを開発している(関連記事)。2012年6月には、同じくミラーで熱を集める太陽熱システムの米Sopogy社と提携し、電気と熱を併用するシステムの開発にも乗り出した(関連記事)。スマートソーラーインターナショナル 代表取締役の富田孝司氏に、今後の戦略を聞いた。

――集光システム搭載の太陽電池モジュールの導入状況を教えてください

 これまでに国内で4件の導入実績がある。合計で20kW程度の規模になる。4件のうち1件では、太陽電池で発電した電気に加えて、太陽熱による熱も利用できるシステムとした。太陽電池セルを冷却する冷却液から熱を取り出し、農業用のビニールハウスを暖める用途に使っている。熱併用システムは、熱を大量に必要とする農業用途に適している。

 現在は、新たに3件ほどの導入を進めている。中には、100kW規模のシステムもある。2012年度中には完成するだろう。この他に、太陽電池の不安定な出力を解消するような仕組みの導入を検討している案件もある。詳細はまだ明かせないが、蓄電池以外の方法で電力を蓄えようというものだ。

――導入したシステムで不具合などはありませんか

 導入から1年が経過したシステムもあり、初期不良はほぼ解消できたと考えている。初期不良の多くは、架台がさびるといったものだった。発電機能などの、本質的な部分に関わる不良は発生していない。

 今後も、10年以上の長期のスパンで、謙虚に検証を続けていかなければならないと考えている。我々のようなベンチャー企業にとって、品質上の問題は致命的な痛手になるだからだ。

――太陽電池モジュールの技術的な改良は進んでいますか

 最新のモジュールでは、出力を従来の150Wから200Wに高めた。出力が高まったのは、モジュールを若干大きくした効果もあるが、それ以外の技術的な工夫も貢献している。ただし技術的な工夫の詳細は公開できない。

 今後は、化合物多接合型太陽電池の搭載も検討する。単結晶Si型太陽電池セルを用いると、モジュール変換効率は15~18%になる。これに対して、化合物多接合型太陽電池セルを使えば、モジュール変換効率が23%に高まる。これに熱を併用すれば、太陽エネルギーの変換効率は合計で40%程度になると試算している。将来は50%を越えて、65%へと高めていきたい。

――取り出す熱の温度はどれくらいですか