図1 左が従来品、右が新開発品。背もたれを中折れ形状とし、座面前端を柔らかくした。
図1 左が従来品、右が新開発品。背もたれを中折れ形状とし、座面前端を柔らかくした。
[画像のクリックで拡大表示]
図2 疲労が減る
図2 疲労が減る
[画像のクリックで拡大表示]
図3 座面前端を柔らかく
図3 座面前端を柔らかく
[画像のクリックで拡大表示]

 日産自動車は、乗員の体格によらず疲れにくくする後席用シートを開発した(図1)。座面の前のひざ裏が当たる付近を柔らかくし、背もたれを中折れにする。同社の試算によると、2時間ほど着座した場合で腰の負担が「最大で約3割減る」とする(図2)。米国ニューヨーク市のタクシーとして採用された「NV200」に標準で搭載する。

 日産はシートを開発する上での指標として、心臓からの血流量を使う。血流量が増えて「身体の血の巡りが良いのが良いシート」(同社)と考える。その実現の形が、背もたれで背中の中心付近に当たる部位の角度を変えること。背もたれの下部より上部を床面に対して立った状態にする。角度を変えないシートと比べて骨盤から胸にかけて支持する面積を大きくでき、血流量が増える。

 日産はこの考えに基づいた中折れシートをミニバン「エルグランド」の2列目シートに採用済み(Tech-On!関連記事)。同車では、二つに分割したウレタンのシートバックを組み合わせて中折れ形状を実現する。その後、2012年に北米で発売したセダン「Altima」の前席に採用した。同車ではシートバックを分割することなく中折れ形状にウレタンを成形し、製造コストを安くした。そして今回、NV200で初めて後席に採用することを明らかにした。

 後席の場合、前席と異なり乗員が常に前を向くとは限らず、本を読んだり寝たりするなど行動形態が多様になる。そこで後席の場合は背もたれの中折れ部の角度を大きくし、背中を少し後ろ側に倒せるようにした。

 その上、後席には子供など小さな体格の乗員も座る。小柄な乗員の場合、足が短いのでひざ裏から太ももの付け根にかけて座面の前側から圧迫されて疲れやすくなる。一方、小柄な乗員に合わせて座面の長さを短くすれば身長が高い乗員の身体を支持しにくい。そこで、座面の長さは従来と同様に高い身長の乗員に合わせつつも、座面の前端を後ろ側と比べて半分程度の硬さにした(図3)。身長が140~145cm程度と小柄な乗員でもひざ裏付近が座面前端から圧迫されにくくなり、疲労を減らせる。