全日本病院学会のシンポジウムで、「神奈川版マイカルテ」プロジェクトについて
全日本病院学会のシンポジウムで、「神奈川版マイカルテ」プロジェクトについて
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 神奈川県の黒岩祐治知事は、2012年9月22日、横浜市で開催された第54回全日本病院学会のシンポジウムで講演し、「ICT(情報通信技術)による診療情報の利活用は、まずお薬手帳の電子化から取り組みたい」と方針を述べた。

 このシンポジウムは、神奈川県が検討している「マイカルテ」プロジェクトをテーマにしたもの。旗振り役である黒岩氏のほか、医療情報や情報科学の専門家が講演した。

 黒岩氏は、日本がワクチン後進国とされていることを例に挙げて、診療情報の利活用の重要性を説明した。副反応がマスコミで大きく取り上げられた影響が大きいとした上で、「副反応1件が、1000件の接種で発生したのか、100万件の接種で起きたのかがわからないことに原因がある。これは、患者のカルテが病院の棚で眠っていて、診療情報が見えないためだ」と指摘した。

 さらに黒岩氏は、診療情報電子化の先進事例のシンポジウムを開催した経験から、「補助金がストップすれば事業もとまってしまう」と指摘した。財政状況の厳しい神奈川県では「マイカルテ」に補助金をつぎ込む余裕はなく、「なるべく早く患者にその良さを実感してもらい、いわば『下から』の普及を進めていきたい」(黒岩氏)という。

 併せて、「お金をかけずに普及を図るには、既にある情報ネットワークを活用することだ」(黒岩氏)と語った。そして、薬局が患者に交付し、来局するたびに投与した薬の名称や用法、用量などを時系列で記録していく「お薬手帳」の電子化から取りかかり、診療情報全般のICT化へと進めていく考えを明らかにした。