訴訟の影響をどう見る


 スマートフォン市場には、AppleとSamsungが2強として存在する状態であり、Appleの1社独占ではない。それでも、部品メーカーにとって1機種を大量に販売できるAppleは強大な存在で、スマートフォン部品業界が買い手市場であることに変わりはない。

 なお、AppleはSamsungと特許訴訟中だが、Samsungからの部品調達を減らす、といったことは考えていないと思う。スマートフォン市場からSamsungを排除する意味はないとも考えているようだ。

 ただし、AppleのGUI(graphical user interface)特許が認められたことで、Samsungはじめ競合メーカーは独創的な製品を開発せざるを得なくなる。これまで市場における競合関係は、オリジナルのAppleに対して、後発のSamsungという構図だった。今後は、Apple製品が真似されにくくなるという点でAppleが強くなる可能性はある。一方、Apple以外が独創的な製品を多数出すようになってAppleの存在感が薄れることも考えられる。

 Appleは、日本の部品メーカーの「過剰とみなされてきた品質」を“力”として引き出してくれた存在といえる。しかし、2~3年もすると、Apple製品における高性能化技術への飢餓感は飽和するだろう。これまで日本の機器メーカーなど他の機器メーカーが日本の部品メーカーの力を引き出せなかったことを考えると、部品メーカーは、機器メーカーや、さらには消費者の動向をこれまで以上に見通して、将来のニーズに合った開発を進める必要が出てくる。すでに、そうしたことができている部品・部材メーカーは強い。