IDF 2012の2日目の基調講演では、米Intel社のSenior Vice PresidentでSoftware and Services Group, General ManagerのRenee James氏が登壇した(図1)。講演の中で時間を割いてアピールしたのが、HTML5やセキュリティー機能の重要性である。
米Intel社がHTML5に着目するのは、異なるソフトウエア基盤(プラットフォーム)での動作が可能になるからだ。アプリケーション・ソフトウエア(以下、アプリ)の開発者の利益向上や開発負担の軽減につながると同社は説明する。
Intel社によれば、月当たりの収益が100~500米ドルであるアプリが全体の約1/3を占めており、アプリ全体の約63%は月当たりの収益が5000米ドル未満であるという(図2)。
その上、iOSやAndroid、Windowsなど、異なるプラットフォームへの対応の他、莫大な数のアプリの中から、自分が開発したアプリをユーザーに見つけてもらうまでのマーケティング活動の負担が大きいという。例えば、あるアプリを使い続けるユーザーの数は、3カ月後には1/4にまで減少するという。ユーザーの定着率向上のためにも、マーケティング活動が必要になる。
こうしたアプリ開発者の負担を軽減するために、Intel社はHTML5によるアプリ開発を促す考えを示した。講演では、HTML5を使って開発した電子教科書アプリや3DCGなどの動作実現も披露した(図3)。この他、開発者支援に向けて、「Intel Developer Zone」と呼ぶプログラムを新たに立ち上げた。
コンピュータは透明な存在へ
講演でJames氏は、クロス・プラットフォームに対応できるHTML5やクラウド環境などを活用することで、あらゆる場所にコンピュータが偏在する「ユビキタス・コンピューティング」から、コンピュータの存在にユーザーが気が付かない「Transparent Computing」の時代が到来すると述べた(図4)。このTransparent Conputingの時代にますます重要になるのが、クライアント側のセキュリティーだと強調した。
その一例として、講演では米McAfee社が開発中である、個人情報保護機能を備えたソフトを紹介した。同ソフトを使えば、FacebookのようなSNSで公開した写真に関して、第三者に対して「閲覧」だけを許可して、コピーされて使用されたり、印刷されたりしないようにできるという(図5)。今後は、セキュリティ機能強化のために、ソフトウエアに加え、ハードウエアでの安全性確保のための技術を盛り込みたいとした。