上海から西に約200キロにある中国江蘇省丹陽市の丹陽経済開発区で7月2日、日本の中小自動車部品メーカーが集結する「日本自動車部品工業団地(JAPIC)」が開業した。この日開かれた式典には進出を決定した日本の自動車部品メーカー23社が調印した。

7月2日に開業した「日本自動車部品工業団地(JAPIC)」
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日本の自動車部品メーカー23社が調印式に臨んだ
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丹陽副市長の董鈞氏
丹陽副市長の董鈞氏

 式典の冒頭に挨拶した丹陽副市長の董鈞氏は「2012年内には50社に上る見通しで、これから3年から5年の間で400社の日本企業の進出を見込んでいる」と打ち上げた。続いて丹陽経済開発区主任の李剛氏も「丹陽は約800社の自動車部品工場が集積する地域で、4万人の自動車部品に精通するスタッフがいる。ここに優れた技術を持つ日本の部品メーカーを積極的に誘致していきたい」と語った。

丹陽経済開発区主任の李剛氏
丹陽経済開発区主任の李剛氏

 年間1850万台を販売する世界一の自動車市場である中国には、トヨタ自動車、日産、ホンダなどのメーカーの進出に伴い、系列のティア1も現地生産を進めている。そうした中、ティア2以下の中小部品メーカーが進出している例はまだ少ない。そこでティア2以下も進出が容易なように企画されたのが、この日本自動車部品工業団地である。

 日本自動車部品工業団地の特徴は、系列を超えたティア2以下の中小部品メーカーを集積することにある。それを可能にしたのが、丹陽経済開発区の誘致戦略と日本の中小自動車部品メーカーに太いパイプを持つ元トヨタ自動車の上海主席代表、東和男氏の存在だ。東氏が董事長兼総経理を務める「東龍日聯企業管理有限公司」がこの工業団地の運営会社となり、全面的なサポートを行うことで、中国市場でノウハウのない中小部品メーカーでも安心して進出できる仕組みを構築した。

中国3000万台生産時代に部品メーカー参入のラストチャンス

東龍日聯企業管理有限公司董事長兼総経理の東和男氏
東龍日聯企業管理有限公司董事長兼総経理の東和男氏

 東氏は「中国で生産する日本メーカーは、自動車に必要な部品3万点のうち、日本から47パーセントを輸入している状況。積極的に現地調達率を高めていかないとこれから進むコスト競争には勝てない」という。「そのためには自力ではなかなか進出が難しいティア2以下の部品メーカーの進出を促し、支援できる工業団地の建設が不可欠だった」という。

 その一方で、「2020年には全世界で1億台の車が生産される見通しだが、そこに中国が占める割合は4割近くに達する。2015年にも中国が生産する自動車販売台数は3000万台に上る見通しで、日本メーカーだけでなく、中国メーカーや中国に進出している欧米メーカーに対しても日本の部品メーカーが部品を供給できるチャンス」(東氏)でもある。

 今回、記念式典と合わせて開催された展示会に出展したデンソーも「3000万台時代が到来する2015年には中国自動車産業においてもティア1以下、ティア4までのすべてが決定する。まさに今が最後の座布団の取り合いで、部品メーカーがそこに参入するには今年がラストチャンス」(自動車用点火コイルを生産する無錫電装阪神汽車部件)と言い切る。

デンソーのブース
デンソーのブース

 同じく展示会に出展し、今回の工業団地に第1号で進出を決めた浦和制作所も「日本国内の市場が伸び悩む中、成長する中国市場に活路を見出すために進出を決定した」(パワーステアリングのギアケースを製造する丹陽浦和精密機械加工有限公司)という。同社は中国に独自に進出する計画を進めていたが、「中小では難しい手続きのサポートや人材の支援、納品先の支援、さらには資金力がない中で、丹陽経済開発区が打ち出した最初の3年間のレンタル工場利用料が無料という優遇策もあって、丹陽の工業団地への進出を決めた」という。

浦和制作所のステアリン用アルミダイカスト加工
浦和制作所のステアリン用アルミダイカスト加工

 日本自動車部品工業団地の総面積は1000ムー(66.67万平方メートル)で総投資額は6億ドル(約480億円)。第一期は300ムー(約20万平方メートル)の敷地に、建設面積10万3000平方メートルのレンタル工場を建設する。そのうち5万平方メートルのレンタル工場17棟と共同棟が今年6月に完成し、残りの約5万平方メートルのレンタル工場18棟も8月から着工し、年内には完成する見込みだ。第1期は日本自動車部品工業園区(JAPIC)、第2期は日本自動車装備工業園区(JAEIC)を主体としている。「将来は年商100億元(約1250億円)の自動車工業団地に育てていく」(東氏)計画だ。

日本自動車工業団地の計画図
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日本自動車工業団地の建設予定地
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