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ヘルスケア・サービスの利用シーン(1)――事業化に向けた五つの成立条件

2012/06/11 08:00
笹木 雄剛=テクノアソシエーツ

事業化が難しいヘルスケアサービス

 高齢化社会の拡大、医療費の増大など、社会的要因により予防医療や健康増進の対策・促進が急務となっている。病気になってから治すのではなく、病気そのものを予防したり、健康を増進したりするヘルスケア・ソリューションを提示することが、社会的要請に応えるだけでなく、個人の健康なライフスタイル実現に貢献することにつながる。

 近年のセンシング技術や集積技術などの進化は、生体データや生活データ(健康データ)を「見える化」(デジタル化)を容易にした。代表的なデバイスは、体組成計や活動量計、血圧計などで、採血などの身体侵襲を伴わずにデータを取得することが特徴だ。パソコンやスマートフォン、多機能情報端末などとの連携・融合も進み、高い利便性で健康管理を可能にするヘルスケア・サービスが登場してきている。

 一方、個人がヘルスケア(疾患予防や健康増進)に積極的に関与するのは、病気になり、健康不安を感じてから。一部の健康高感度層を除き、健康に不安を感じていない個人が、健康増進や疾患予防に積極的に関与したり、継続したりする動機付けは弱い。

 また、国民皆保険制度が普及している日本では、“診断・治療”以降でかかる自己費用負担は低く抑えられており、保険料も上がらない。こうした社会背景も一因となり、個人がわざわざ高い費用を負担して、予防や健康増進に積極的に関与する動きが広まりにくく、ヘルスケア・サービスがビジネスとして成立しにくいのが現状となっている。

利用者が積極的に関与する健康相談サービス

 こうした背景の中、ヘルスケア・サービスの利用シーンにおいて、どのような成立条件がビジネスの突破口のヒントになるか、過去の事例から想定した。

 例えば、岩手県遠野市が実施しているICT(情報通信技術)を活用した遠隔健康相談サービスである。多くの遠隔医療の実証プロジェクトが苦戦する中、同サービスは数少ない成功事例として関係者から評価されている。当初は、総務省の事業の一環として実施されていたが、事業終了後、市の単独予算を計上するとともに、利用者から利用料を徴収し、継続運営している。

 サービスは、遠隔地の医師や相談員と連携し、歩数や血圧、体重・体組成といった利用者の健康データを基に、地域の集会所でテレビ電話による健康相談・指導を実施するといったシンプルなものだが、利用者がサービスを高く評価し、継続を望む強い要望があったという。

 具体的には、医師や相談員が、利用者個人の健康データに基づいて個別アドバイスや指導を行う、週1回集会所に集まることで、利用者同士のコミュニケーションが生まれ、健康コミュニティを形成、といったことなどが利用者に高く評価され、継続性につながっている。

ヘルスケア・サービス成立の5条件

 テクノアソシエーツでは、調査レポート「ヘルスケア産業はこうすれば立ち上がる」の中で、遠野市の取り組みを含め、国内のヘルスケア・サービスの代表的な事例の分析を行い、そこから主な成立条件として、以下の五つが浮かび上がってきた。

  1. 日常で無意識にデータを取得・蓄積する。
    データを取得・蓄積するために、機器を立ち上げたりするといった特別な作業が必要になると手間がかかる。日常生活の中で、意識せずに健康データを取得・蓄積できる状況が望ましい。
  2. 科学的根拠を示し、効果を実感させる。
    利用者にサービスの価値を認めてもらうためには、客観的なデータに基づき、それを活用した効果には科学的な根拠(エビデンス)があることを示し、利用者にその効果を実感させる、という一連のプロセスが欠かせない。
  3. データ分析結果を個別にカスタマイズする。
    取得・蓄積したデータをマイニングして、個人別に役立つ情報を提供することがサービスの価値を決める根幹となる。個人のデータに特化したピンポイントのアドバイスであれば価値が高まり、継続的な利用にもつながる。
  4. 継続するほど価値が上がる仕掛けを作る。
    例えば、データを蓄積するほど解析精度が高くなるようにするなど、サービスを継続するほど価値が上がるような“仕掛け”を作る。継続性が高まり、他社サービスへスイッチしにくくなり、優良顧客の囲い込みにつながる。
  5. 分かりやすいインセンティブを設定する。
    高齢者は人とのつながり、健康高感度層は健康づくりそのものに価値を見いだすが、それ以外の層は金銭的なインセンティブといった分かりやすいインセンティブに影響される。

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