2012年6月5~7日、ゲーム関連で世界最大級の展示会「Electronic Entertainment Expo(E3)」が米国ロサンゼルスで開催される。E3では、新作ゲームだけでなく、新型ゲーム機やゲーム・サービス、それらに使われる技術などについても毎年発表されるため、エレクトロニクス業界にとっても見逃せないイベントだ。そこで、ゲーム業界に詳しいSMBC日興証券 株式調査部 シニアアナリストの前田栄二氏に、今年の見所について語ってもらった。(聞き手:根津 禎=日経エレクトロニクス)

 今年(2012年)のE3で注目しているトピックは大別して四つある。第1に、据え置き型ゲーム機「Wii U」を中心とした任天堂の戦略である。昨年(2011年)のE3でWii Uを初めて発表したときには、株価が下がるなど周囲の理解はそれほど高くなかった。今年はWii U用のゲーム・ソフトがいろいろと明らかになる。新型ゲーム機は一般に、具体的な対応ソフトが発表になってから、周囲の評価が上がっていく。Wii Uも例外ではない。

 Wii Uの他、ゲーム・ソフトのダウンロード販売にも注目している。同販売への移行は、同社の喫緊の課題だからだ。

 第2に、E3に初出展するグリーの動向である。同社は日本で成果をおさめ、海外戦略に力を入れている。海外にサービスを展開する上で、今年は勝負の年になる。それだけに、E3でのグリーの発表に注目している。

 グリーの出展は、E3にとっても重要な意味を持つ。昨今、ゲーム・パブリッシャーがパッケージ・ソフトの供給を絞り、ソーシャル・ゲームへ注力する中、E3の立ち位置も変わってきている。もともとゲーム専用機とその対応ゲームの展示会だったが、今後はソーシャル・ゲームを含めた、より広い意味でのゲームの展示会に生まれ変わるだろう。今年初めてグリーが出展することは、その象徴である。

 第3に、日本のゲーム・パブリッシャーの動向だ。例年通り、各社から大型タイトルが発表される。

 例えばカプコンは、人気アクション・ゲームの「ロストプラネット・シリーズ」や「デビルメイクライ・シリーズ」の最新作を出す。海外でもヒットするタイトルだけに注目している。

 スクウェア・エニックスの大型タイトルは、「トゥームレイダー・シリーズ」の最新作と「ヒットマンアブソリューション」だ。前者は2013年1~3月に、後者は2012年末に発売されるだろう。発売時期がずれているのは、販売戦略としてバッティングを避けていると推察できる。両タイトルは、同社が2009年に買収したEidos社とのシナジーがどの程度出たのかを見極める上で重要である。

 コナミデジタルエンタテインメントは、2012年末に発売予定の「メタルギアソリッド・シリーズ」の最新作を試遊できる状態で出展するだろう。同社のパッケージ・ソフトの大型タイトルは、これだけになりそうだ。

 同社は現在、パッケージ・ソフトのタイトル数を絞っている。5年前は年間100タイトルほど発売していたが、2011年は50弱に減らし、2012年は10タイトルほどにまで削減する予定だ。メタルギアソリッド・シリーズの他、野球とサッカーを題材にしたパッケージ・ソフトを制作するだろう。いずれも、高い売り上げを見込めるゲームに絞ったのだ。

 パッケージ・ソフトを絞った分、ソーシャル・ゲームの開発に注力する計画である。コナミデジタルエンタテインメントは、米国の大手ソーシャル・ゲーム企業Zynga社のソフト配信基盤(プラットフォーム)にゲーム・ソフトを提供するなど、ソーシャル・ゲームに力を入れている。E3は米国で開催されるだけに、Zynga社のプラットフォーム上で展開するタイトルの発表があると考えている。

クラウド型ゲームに注目


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