「第3回 国際ナノ・マイクロアプリケーションコンテスト(iCAN'12)」の国内予選が、2012年5月16~17日に宮城県仙台市で開催された。MEMS(微小電子機械システム)デバイスを使ったアプリケーションの新規性や実用性などを学生(高校生から大学院生まで)が競った。優勝したのは郡山北工業高等学校。2012年7月に北京で開催される世界大会に出場する。
iCANは、MEMSやナノテクの応用範囲を広げるとともに、理工系学生の育成を狙っている。世界各国で予選を開催し、予選通過チームが中国で開催される本大会に出場する。2011年には京都大学のチームが世界大会で優勝した。
今回の予選では、1次審査を通過した10チームが参加した。以下、発表順に内容を紹介する。
京都大学の「TBT」が提案したのは多機能運動補助装置「MEAS」。バンドで数個の加速度センサをユーザーの腕などに固定し、各部位の傾斜データをBluetoothでパソコンに送信できるようにしてある。まずは、目標とする運動(ゴルフのスイングやリハビリ時の動き)をした際の傾斜データを記憶する。次にユーザーが運動した際の動きが目標に達したときにLEDや音声などで知らせる。目標との差を音声で伝えることもできる。
東北大学の「Dragon Fly」の提案は「I am a pen!」。ペンを持たせた自走式ロボットで様々な場所に図形や文字を描かせる。MEMSによる超音波センサと赤外光LEDをあらかじめロボットの周囲に複数台配置しておき、ロボットとの距離で決まる超音波と赤外光の遅延時間から位置を推定する。携帯可能でさまざまな対象物に描画できる。
同じく東北大学から参加した「Team natural science」は、「コンパクトかつ安価な3Dスキャナ」を提案した。MEMSスキャナから測定対象物に向けて光線を発し、光線の照射形状をカメラで撮影、撮像データから対象物の形状を推定する。MEMSでプロジェクタが小型で安価になっていることに着目した。スマートフォンと組み合わせれば、ユーザーがネット通販をする際に体型や物の形といった3次元形状を店舗に容易に知らせることができる。
東北工業大学の「Team Mizuno Lab.」は、「危機通知式LEDジャケット」を試作した。MEMSマイクを備え、音を検知すると光る。夜間に着用すると、自動車が近くを走った際などに、光って存在をドライバーに知らせる。ユーザーに対しては、アクチュエータで発生させる振動で自動車などの存在を伝える。
豊田工業高等専門学校の「TTT」は、3次元マウスのような入力デバイス「I2D」を提案した。球形ケースに加速度センサと角速度センサを内蔵させ、ユーザーがケースを手に持って動かすと、その動きと位置を把握する。これをパソコンに伝送する。CGで作成した3次元モデルを直感的操作で動かすことができる。
一関工業高等専門学校の「Freedom Labo INCT」による「ドローイングシューズ」は、ユーザーが着用して足を動かすと、その動きの通りに描画できる靴。内蔵した加速度センサで靴の動きを把握する。着地していることを認識するための圧力センサも備えており、足が浮いている時だけ描画するようにしている。玩具やリハビリのツールとして使える。
優勝した郡山北工業高等学校の「ROBO Pro2 Team」が試作したのは「ココあるっち」。市販の位置情報端末と加速度センサを組み合わせ、自転車などが盗難された時に、その居場所を自動的にユーザーに知らせる。ユーザーはあらかじめこの装置を自転車に固定して待機状態にしておく。盗難されて長時間にわたって振動を検知すると、サーボモーターを駆動して位置情報端末の位置通知用スイッチを押す。ユーザーが自転車を利用する場合は、待機状態を解除する。
宮城県工業高校の「FLEXIBLE」は、直感操作が可能なラジコンのコントローラ「鷲」を提案した。MEMSマイクを備えた音声操作型と、加速度センサを備えた動き操作型、小型化を追求した腕時計型の3種類。市販のラジコンのコントローラ機能をこれらで代替する。音声型では「飛べ」といった声を認識する。動き操作型では例えばユーザーの捻り動作を把握する。
仙台第一高等学校の「Sendai-First High School Denken」は「ファントムワンド」と名付けた楽器を提案した。加速度センサと磁気センサを備え、振るなどの動作で音を発する。あらかじめさまざまな種類の音源を記憶させておくことができる。
同じく仙台第一高等学校の「Miyagiken Sendai Daiichi High School Physics Club」の「ボディ・インスト」は、手袋型と靴下型の2種類の楽器。装着して体を動かして、その動きのよって音を制御する。加速度センサと磁気センサを内蔵する。