三菱電機の「大船スマートハウス」。日産自動車の「リーフ」の左にある装置が「PV-EV連携パワコン」。さらにその左にあるのは、「ガンスタンド」という名の充放電スタンド。急速充電の「チャデモ」規格に準拠するが、充電時の出力は3.5kWであるという。
三菱電機の「大船スマートハウス」。日産自動車の「リーフ」の左にある装置が「PV-EV連携パワコン」。さらにその左にあるのは、「ガンスタンド」という名の充放電スタンド。急速充電の「チャデモ」規格に準拠するが、充電時の出力は3.5kWであるという。
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PV-EV連携パワコン
PV-EV連携パワコン
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一般的な昼間の制御の例。PVが主な電力供給源となり、系統電力の電力は利用しない。
一般的な昼間の制御の例。PVが主な電力供給源となり、系統電力の電力は利用しない。
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電力会社の電力が不足しそうな場合の制御の例。宅内の家電の消費電力を抑制し、余剰分を系統電力に売電する。
電力会社の電力が不足しそうな場合の制御の例。宅内の家電の消費電力を抑制し、余剰分を系統電力に売電する。
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停電時の制御の例。家電の消費電力を大きく抑制し、PVの発電分の一部をEVの蓄電池の充電に回す。
停電時の制御の例。家電の消費電力を大きく抑制し、PVの発電分の一部をEVの蓄電池の充電に回す。
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同じ停電時でも、夜間などPVの出力が0Wの場合の制御の例。EVの蓄電池の出力だけで家電を利用する。
同じ停電時でも、夜間などPVの出力が0Wの場合の制御の例。EVの蓄電池の出力だけで家電を利用する。
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 三菱電機は2012年5月15日、太陽光発電(PV)と電気自動車(EV)のそれぞれのパワー・コンディショナを一体化した装置「PV-EV連携パワコン」を開発した。これを同社開発のHEMS(home energy management system)と組み合わせることで、平常時は電気代の節約、災害時は系統電力無しでの1週間以上の生活が可能になる見通しだという。

 三菱電機は2011年5月からの1年間、神奈川県鎌倉市にある同社の情報技術総合研究所内に設置した実験用住宅「大船スマートハウス」で「CO2排出の低減をテーマにした実証実験を進めていた」(同社)。一方、今後は「災害で停電した場合に、いかに系統電力から自立して生活できるか」を最大のテーマとする実験を進めるという。さらにハウスメーカーと協力して、実フィールドでの実験を実施することも想定し、早期の事業化を目指すとする。

PVがなくても何とかなる

 PV-EV連携パワコンは、PVとEVのそれぞれのパワー・コンディショナを一つの筐体内にまとめた装置。PVで発電した電力をEV内の蓄電池に充電したり、天候が悪くてPVの発電出力が小さい場合は、EVから家庭内の電気製品に電力を提供する機能を備える。

 今後の実証実験では、このPV-EV連携パワコンと、各種家電の消費電力を把握したり運転を制御したりできるHEMSを組み合わせて運用する。これによって、PVの電力、系統電力、そしてEVの蓄電池の中から、総合的な電力の最適利用を実現することを目指す。

 こうすると平常時は、負荷平準化と各家庭の電気料金の低減が実現する見込みという。例えば、PVの発電分は主に売電するが、電力需要がピークとなる時間帯に電力料金が売電価格より高くなるような場合は、PVの発電出力を主に利用するようにする。一方、夜の電力はEVに蓄電などをする。

 系統電力が長期間停電する大規模災害時は、EVに蓄電した電力をやりくりしながら使うことになる。やりくりはHEMSが担当する。「EVの蓄電池の容量が15kWh以上であれば、1週間は系統電力なしでやっていける見通し」(三菱電機 常務執行役 リビング・デジタルメディア事業本部長の梅村博之氏)。最初の1週間をやり過ごせば、ほとんどの災害で系統電力が復旧すると見込めるという。

 この場合、PVはなくてもよいが、あると災害時でもより楽に過ごせるという位置付けである。PVなしでは各種家電にある程度の利用制限がかかることは避けられない。これに対して、「一般的な家庭でPVが定格4kW以上であれば、平常時とほぼ同じ生活を続けられる」(梅村氏)。

 三菱電機は事業化の際には、EVだけでなく家庭用蓄電池とPVを連携させるメニューも提供していく予定とする。ただし、「家庭用蓄電池は一般にEVの蓄電池ほど容量が大きくないため、停電時に系統電力なしで過ごせる時間はより短くなる」(梅村氏)という。