経済産業省は、9つの技術テーマに関して、日米欧中韓への特許出願動向を調査し、9テーマ中8テーマで日本勢の特許出願件数が最多だったと発表した(発表資料:PDF)。同省が調査したテーマは「燃料電池」「炭素材料及びその応用技術」「水処理膜」「携帯高速通信技術(LTE)」「電子ペーパー」「機能性皮膚化粧料」「医用画像の利用技術」「イオン発生装置及びその応用技術」「インターネットテレビ」の9つで、機能性皮膚化粧料を除く8テーマで日本勢の出願が最多という。ただし、各テーマの出願者上位に東アジア地域の新興企業が食い込んでおり、急速に技術開発力を伸ばしているとみられる。

燃料電池の特許出願ランキング
燃料電池の特許出願ランキング
(データ出典:経済産業省)
 燃料電池に関する特許(調査対象期間:2005~2009年 ※出願年または優先権主張年)の日米欧中韓への出願件数は、日本勢が約58%と過半数を占めた。次いで韓国、米国、欧州勢となっている。全体の特許出願件数は減少傾向。出願者上位は自動車メーカーと電機メーカーだが、一部の電機メーカーの特許出願は急激に減少している。技術開発を見直しているか、技術のブラックボックス化を進めている可能性があると経産省はみている。

炭素材料関連の特許出願ランキング
炭素材料関連の特許出願ランキング
(データ出典:経済産業省)
 炭素材料関連の特許(調査対象期間:2000~2009年 ※出願年または優先権主張年)の日米欧中韓への出願件数は、日本勢が全体の約39%を占めた。炭素繊維に関しては約49%と圧倒的な優位性を示している。ただし、カーボン・ナノチューブ(CNT)関連の出願者上位は日本を除く東アジア勢が1~3位を占めた。日本勢が今後も国際的な優位を保つためには、製造コスト低減などの生産技術の革新が重要と経産省は指摘する。

電子ペーパー首位はエプソン

LTEの特許出願ランキング
LTEの特許出願ランキング
(データ出典:経済産業省)
 LTEに関する特許(調査対象期間:2006~2009年 ※出願年または優先権主張年)の日米欧中韓への出願件数は日本勢が約42%で、米国、欧州、中国、韓国勢を大きく上回っているが、通信規格に向けた提案・貢献度は低いという。

電子ペーパーの特許出願ランキング
電子ペーパーの特許出願ランキング
(データ出典:経済産業省)
 電子ペーパーに関する特許(調査対象期間:1980~2009年 ※出願年または優先権主張年)の日米欧中韓への出願件数も日本勢が過半数を占めた。基本原理の特許も日本企業が出願していたが、電子ペーパー開発初期である1990年代に集中的に出願した米国勢が大きな市場シェアを獲得した。

医用画像の利用技術の特許出願ランキング
医用画像の利用技術の特許出願ランキング
(データ出典:経済産業省)
 医用画像の利用技術に関する特許(調査対象期間:2001~2009年 ※出願年または優先権主張年)の日米欧中韓への出願件数は、日本勢が全体の約38%と最も多い。また、近 年は中国への出願が急増している。技術区分別に見ると、医用画像技術のキー技術である「PACS」(画像保存通信システム)に関しては、日本勢の出願は約54%を占める。一方、医用画像の利用の一形態である「CAD」(コンピュータ支援診断)に関しては、欧州、米国勢の出願が多い。

インターネット・テレビの利用技術の特許出願ランキング
インターネット・テレビの特許出願ランキング
(データ出典:経済産業省)
 インターネット・テレビに関する特許(調査対象期間:2000~2009年 ※出願年または優先権主張年)の日米欧中韓への出願件数は、日本勢が約36%、次いで米国勢が約25%、欧州勢が約19%となっている。また、近年は中国や韓国からの出願が急増している。今後も国際的な競争優位を維持するためには、個人の嗜好を反映した情報提供やSNSとの連携などに関して技術競争力を確保することが重要と経産省はみている。