シャープの奥田氏
シャープの奥田氏
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ビデオでコメントを寄せたHon Hai Precision Industry社のTerry Gou氏。「両社の提携がもたらす相乗効果は、日本がかつての電子機器やコンシューマエレクトロニクスの製造者としての役割から脱却し、高度なテクノロジーの研究開発と国際的なブランド認知の構築を先頭に立って牽引する新しい役割を引き受けていくことを世界に対して示すことになるだろう」
ビデオでコメントを寄せたHon Hai Precision Industry社のTerry Gou氏。「両社の提携がもたらす相乗効果は、日本がかつての電子機器やコンシューマエレクトロニクスの製造者としての役割から脱却し、高度なテクノロジーの研究開発と国際的なブランド認知の構築を先頭に立って牽引する新しい役割を引き受けていくことを世界に対して示すことになるだろう」
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 シャープは2012年3月27日、電子機器の受託製造サービスで世界最大手の台湾Hon Hai(鴻海)グループと、液晶パネルなどの主要事業分野において資本・業務提携すると発表した(リリース)。これに伴い、Hon Haiグループの中核企業であるHon Hai Precision Industry社(鴻海精密工業、通称FOXCONN)とシャープは今後、シャープの大型液晶パネルの主力製造拠点である堺工場の運営を共同で行う。加えて、Hon Haiグループはシャープの全株式の約10%を保有する筆頭株主となる。両者は今後、中小型液晶パネルや携帯電話機などの事業を対象とする、提携関係のさらなる拡大に向けて協議を続けていく。

 シャープは3月27日夕方に都内で記者会見を開催し、4月1日付で同社社長に就任する奥田隆司氏(現 常務執行役員)が登壇した。同氏は今回の提携の背景について、「これまで当社は単独で垂直統合モデルを追求してきたが、経営環境は厳しさを増しており、今後もグローバル市場で単独で戦うことには限界がある」と語った。その上で、「オンリーワン技術/商品の開発力を持つ我々と、高い生産/加工技術を持つHon Haiグループが一緒になることで、グローバル・レベルの垂直統合モデルを新たに構築できる。これにより、魅力的でコスト競争力のある製品を迅速に市場投入できるようになる」とした。Hon Haiグループが提携先としてシャープを選んだ理由については「我々の大型液晶パネル技術が高く評価された」(奥田氏)結果だとした。

 今回発表された提携の内容は、大きく二つある。第1に、Hon Hai Precision Industry社のCEOであるTerry Gou(郭台銘)氏が、堺工場での液晶パネルの生産・販売を担うシャープディスプレイプロダクト(SDP)の全株式のうち、シャープ保有分(92.96%)の半分に当たる46.48%を取得する。取得額は660億円。この結果、SDPへの出資比率は、シャープと「郭台銘氏と他の投資法人など」が46.48%ずつ、ソニーが7%となる。その上で、Hon Hai Precision Industry社とシャープは「SDPをワンチームとして共同運営」(奥田氏)し、2013年をメドに、堺工場で生産する液晶パネル/モジュールの50%をHon Hai Precision Industry社が引き取る形とする。液晶パネル/モジュールの引き取りは2012年10月ごろから開始するという。

 この提携を通じ、シャープは「スケール・メリットによる部材調達力やコスト競争力の強化を図れる」(奥田氏)とみる。また生産調整中の堺工場の稼働率を「100%に回復することを目指せる」(同氏)とした。液晶パネルの開発は基本的にシャープが単独で手掛けるが、液晶モジュールでは両社で「設計を共通化するといった取り組みを検討する」(同氏)という。

 第2に、シャープがHon Haiグループを割当先とする第三者割当による新株式を発行し、Hon Haiグループがシャープの全株式の9.88%を取得する。これに伴うシャープの調達資金は669億円。9.88%の内訳は、Hon Hai Precision Industry社が4.06%、FOXCONN Technology社(鴻準精密工業)が0.65%、FOXCONN (FAR EAST)Limitedが2.53%、Q-Run Holdings Limitedが2.64%である。Hon Hai Precision Industry社の株式保有比率は単独ではシャープの株主中最大とはならないが、Hon Haiグループとしては筆頭株主になる。

 シャープとHon Haiグループは今後、提携範囲のさらなる拡大を図る。幅広く「共同の設計や工場を使いこなしていく」(奥田氏)方針であり、製品分野については「中小型液晶パネルや、携帯電話機などのモバイル機器での提携を検討していく」(同氏)という。太陽光発電事業が提携の対象となる可能性もありそうだ。