2012年3月6~9日に日本経済新聞社およびLED照明推進協議会(JLEDS)共同開催による「LED Next Stage 2012」が東京ビッグサイトで催された。来場者数は4日間で6万9191人であった。

 昨年同時期に開催された「ライティング・フェア」では最終日の3月11日、同会場で多くの来場者や出展者は大震災に遭遇した。その記憶もいまだ残る中、今年は隔年開催のLED Next Stageが場所を同じく開催された。この1年、日本におけるLED照明産業が大きく前進したことが感じ取れる展示であった。大震災を機に「省エネ」というキーワードはより重要視されたが、今回さらに快適さをプラスした空間の実現を目指し、各社は「省エネで快適な空間」づくりをテーマにさまざまな提案を示した。

 今回の展示会では、快適な空間を実現するために、発光効率や器具効率、演色性、広配光などを改善した照明器具のラインナップを充実させる出展が見られたものの、こうした性能だけでは製品の大きな差異化が難しくなってきている。そのため、展示会ではユーザーの感性に訴えるような光の使い方を提案する出展が見られた。また、大光束化を進めてLED照明の利用範囲を広げる照明、例えば高天井照明や投光器など屋外照明製品をより充実させる動きもある。さらに、「可視光通信システム」を組み合わせた製品の提案もあった。

光の使い方の提案


 ユーザーの感性に訴える光の使い方の提案としては、「サーカディアン・リズム」「光で賑わい感を演出」「日本人の肌を綺麗に見せる」「照らす光から、満たす光へ」「残光機能付LEDランプ」といったことを打ち出した参考出品があった。

 パナソニックは、サーカディアン・リズムで照明を制御する技術を披露した。サーカディアンとは“circadian”という英語の専門用語で、1959年に提唱されたもの。サーカディアン・リズムとは約24時間の周期を持つ生体リズムを指す。

 このリズムを利用した照明技術は例えば2010年に照明デザイナーの石井幹子氏、ローム、岡村製作所により共同開発され、一部実用化されているが、パナソニックも本格的な市場投入に向けて動いている。照明光の波長制御技術とサーカディアン・リズムを応用し、快適性とエコの両立を目指す照明を提案していくという。

 パナソニックはこの他、「美光色」と名付けたLED照明を2012年4月15日から順次市場に投入する。設置想定空間は化粧品売り場、フィッティング・ルーム、美容室などである。「美光色」は日本人女性の理想とする肌の色により近く見せるための光を提案したもので、肌のくすみが目立つ原因となる波長を調整することにより、肌の色が美しく見えるという。

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パナソニックによる「エコサーカディアン照明制御」を説明

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パナソニックによる「エコサーカディアン照明制御」で省エネと快適性を実現させるための照明制御の実践例

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「美光色」日本人女性の理想とする肌の色により近く見せる光の提案

 東芝ライテックは、明るさ感をコンセプトにした「Weluna:ウェルナ」を使い、間接照度(壁などに反射して目に届く光)を定量的に表す数値指標を提案した。この指標を用いて「省エネでも明るい」と感じる照明空間を実現できるとアピールしていた。パナソニックでも独自指標「Feu」がある。各社は光に対する新たな指標を設け始めているといえる。

 「Weluna」とは“よい”という意味の“Well”と“月”という意味の“Luna”を組み合わせた造語。やわらかくここちよい月明かりのように、快適でやさしい照明空間を演出するという意味を込めている。照明空間において、天井・壁・床などに反射して目に届く光を作る。
このほか「E-Core custom」として、モジュールのパワー、色温度、演色性などをセミオーダ方式で顧客の好みにカスタマイズできる販売スタイルなどを提案していた。

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間接照度で明るさ感をアップ

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一般的な照明の設置位置と間接照明による照明でのWeluna指標による比較

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顧客によるカスタマズ可能な「E-Core custom」

 NECライティングは、残光機能付LEDランプを参考出品した。同社製品である「ホタルック」の技術をLED照明に応用したもので、電気を消した後もコンデンサに蓄積された電力で残光を作りだす。残光はホタルックを備えた蛍光灯よりはるかに長く、10分以上は持続する。突然の停電時にあわてない、消灯後の移動を楽にするなどの利点があるとする。

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参考出品された残光機能付LEDランプ