村田製作所 執行役員の中島 規巨氏。MWC 2012では、ホール4に商談用ブースを設置していた
村田製作所 執行役員の中島 規巨氏。MWC 2012では、ホール4に商談用ブースを設置していた
[画像のクリックで拡大表示]

 「スマホの電池が持たない」――。スマートフォンの利用が広がるにつれ、ユーザーからこのような声が多く聞かれるようになった。画面サイズの大型化や、動作周波数の高いプロセサの採用、さらに通話以外のアプリケーションが増えることで、結果的に電池駆動時間が短くなる傾向にある。さらにLTE対応スマートフォンでは、無線回路部(RF回路部)の消費電力も増大する傾向があるという。LTEスマホのRF回路部の現状と、消費電力低減のためにとりうる対策について、携帯電話機のRF回路部品を手掛ける村田製作所 執行役員 モジュール事業本部 副本部長の中島 規巨氏に話を聞いた。


――ここへきて、スマートフォンの無線回路に向けた低消費電力部品の発表が相次いでいる。今、スマートフォンの無線回路ではどのようなことが起きているのか?

中島氏 今、スマートフォンはLTE対応に向かっている。LTEは世界共通の通信方式なので、LTE対応であれば世界のどの地域でも利用できる。ただ、そのために、無線回路にはLTEサービスで利用する周波数帯向けの新たな回路要素が必要になる。特に重要なのが、送信出力を高めるためのパワー・アンプ(PA)だ。多くのLTE端末は、GSMや3Gサービスも同様に使えるように設定されていることから、そのまま設計すれば、GSM用と3G用、そしてLTE用のパワー・アンプが併存する格好になる。

 多数のパワー・アンプが必要になると、当然実装面積が大きくなる。また部材コスト(BOM)も上昇する。端末メーカーや携帯電話チップセット・メーカー(プラットフォーム・ベンダー)にとっては、好ましくない。

 このため、複数の周波数帯の信号増幅を1チップで処理できる「マルチバンド型PA」に注目が集まっている。これを使えば、実装面積を低減でき、またBOMも低くできる。さらに、GSMや3G、そしてLTEという異なる通信方式の信号増幅に共通に利用できる「マルチモード型PA」も求められる。大手プラットフォーム・ベンダーは、今後はマルチモード・マルチバンド型(MMMBと呼ばれる)PAの利用を前提としている。端末メーカーは、一部のメーカーを除き、それに追随する方向にある。既に、マルチバンド型PAを使ったLTEスマートフォンが、発売されている。

 ただし、ここに問題がある。マルチモード・マルチバンド型PAの効率(電力付加効率)は、従来のシングルモードやシングルバンド品に比較すると、低くなる。35%台後半といったところだ。