会見する坂本氏
会見する坂本氏
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会見には、エルピーダメモリ 取締役 CFOの白井康雄氏(向かって右)、弁護士の小林信明氏(向かって左)が同席した
会見には、エルピーダメモリ 取締役 CFOの白井康雄氏(向かって右)、弁護士の小林信明氏(向かって左)が同席した
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 エルピーダメモリは、2012年2月27日に東京地方裁判所に会社更生法の適用を申請したことを受けて、同日午後6時45分から東京証券取引所で記者会見を開催した(Tech-On!関連記事1同2同3)。エルピーダメモリ 代表取締役社長 兼 CEOの坂本幸雄氏などが登壇した。坂本氏は、「コスト低減や為替対策、事業提携などを通じた経営改善を図ってきたが、弊社の経営環境は厳しさを増している。会社更生法の適用を申請し、裁判所の管理下で経営再建を進めるタイミングは今がベストだとの判断にやむなく至った。皆さまには多大なご迷惑をお掛けして申し訳ない」と無念さをにじませて語った。同社の負債総額は4480億円に上った。坂本氏ら経営陣は当面続投し、弁護士のアドバイスの下にスポンサー選定などを進めて経営再建を図るという。

 坂本氏は、会社更生法の適用申請を最終的に決断したのは「今日の(午後)3時」だとした。支援を期待していた企業から、「前向きな回答をもらったものの、いつまでに契約するといった具体的な形のオファーではなかった」ことが決め手になった。悪化していた資金繰りについては、「(2012年)3月までは大丈夫だと見ていたが、中長期的には厳しかった。リファイナンス(金融機関からの借入金の借り換え)も難しいということを認識した」と説明した。自らの経営責任については、「経営判断を誤ったということになると思うが、ここまで円高が進むとは予想できなかった。為替変動の大きさは一企業の努力ではカバーしきれない水準だった」とした上で、2009年に国の支援を受けたにもかかわらず自力再建できなかったことについて「非常に申し訳ない」とした。

 エルピーダメモリは今後、広島工場の操業を含むDRAM事業を継続するという。「今回の件で、我々はつぶれるのではない。社員もこれまで以上に頑張り、韓国メーカーに負けない製品を生み出してくれるだろう。DRAM事業を今後も続けていくためには30%の市場シェアが必要と考えており、それを念頭にいろいろな施策を考えていく」(坂本氏)とした。従業員の解雇については「今は考えていない」(同氏)という。他社との提携には具体的に言及しなかったが、DRAM業界では「これから何らかの提携が起きるだろう」(同氏)と語った。

 会見に同席した弁護士の小林信明氏は、坂本氏をはじめとする現経営陣が続投する理由について、次のように説明した。「従来は、経営陣が退陣するというのが会社更生法適用における一般的な形態だったが、今回の再建ではDIP形と呼ぶ別の枠組みを適用する。半導体は専門性が高いため、(半導体の)素人では再建は図れない。坂本氏には、再建を全うしてもらうという形で経営責任を果たしてもらう」。坂本氏は自らの進退について「今やめることは簡単だが、エルピーダの行く末をきちんと見届けたい。自分(の中長期的な進退)に対しては覚悟をもって臨んでいく」と語った。