図1 トヨタ専務役員の伊地知氏
図1 トヨタ専務役員の伊地知氏
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 トヨタ自動車専務役員の伊地知隆彦氏は2012年2月7日、同社の決算会見の場で改めて国内での技術開発に力を注ぐ姿勢を示した(図1)。「圧倒的な技術力を持って世界で戦うときに、日本の人材と供給体制は頭一つ抜けている。技術力にこだわるために、日本にこだわる」と述べた。トヨタはかねて、国内の生産台数として300万台を維持する考えを示している。この数字に対しては「日本で造って経済合理性のある自動車の台数を積み重ねていくと、今は300万台くらいになる」(伊地知氏)とし、あくまで経済性を重視した数字であることを強調した。

 2011年度の通期の見通しで示した営業利益が2700億円という数値に対して伊地知氏は、「東日本大震災の影響で1600億円、タイの洪水で1100億円ほど下押しされた数字」との見方を示し、「たらればの話しだが、災害がなければ1ドル=78円として5400億円の利益が出せた」と述べた。その上で、「この5400億円という数字が、(今の円高の状況下で出せる)我々の実力だと考えている」と語った。

 震災や洪水の影響を受けての今後の事業継続計画(BCP)については、「部品によっては在庫を増やす」(伊地知氏)考えを示した。ただしトヨタ生産方式(TPS)に基づいて在庫を減らす活動を同時に続けていくことも強調し、TPSの考えが災害の影響を大きくしたとの見方に反論した。「在庫を減らすことがTPSの目的ではない」(同氏)という。そして「在庫があるとラインの問題点が分からなくなる。だから在庫を減らす。在庫を減らせばラインは停まりやすくなり、停まれば問題点が顕在化する」(同氏)と述べた。

 伊地知氏は2012年の世界の自動車市場の見通しにも言及し、「欧州以外は堅調」との見方を示した。日本市場は「エコカー減税の延長で活性化している」(同氏)とし、軽自動車を含めて販売台数は500万台程度に達するとみる。その中でトヨタは軽自動車を含めて163万台を販売する計画だ。北米市場については、2011年から5%程度増えて約1360万台になると見込む。その北米市場でトヨタは、一部改良を含めた19車種を新たに投入して約190万台の販売を狙う。欧州市場については「見通せない状況」(伊地知氏)としながらも、2011年の「80万台を上回りたい」(同氏)と述べた。

 さらに中国市場については、2011年が1850万台程度のところ、2012年はそれを少し上回る販売台数になる見通しを示した。そのうちトヨタは、2011年の88万台を大幅に上回る100万台以上を販売する狙いを示した。中国と日本以外のアジア市場については「前年を上回る」(伊地知氏)とみている。