講演する篠田卓也氏 シーディー・アダプコ・ジャパンが撮影。
講演する篠田卓也氏
シーディー・アダプコ・ジャパンが撮影。
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 デンソーは、エンジン用ECU(electronic control unit)の熱解析シミュレーション技術を向上させた。1年ほど前に筆者が聞いた際には、シミュレーション技術の高精度化を追求して、実測との差異(誤差)を10%以内に縮小している(Tech-On!関連記事1)。今回は、シミュレーションと多目的最適化ツールを組み合せて、熱設計の最適化をコンピュータ上で行えるようにした。さらに、シミュレータと熱抵抗・容量測定装置を連携させた。

 その成果が、CCSC 2011(CDAJ CAE Solution Conference 2011:シーディー・アダプコ・ジャパンがパンパシフィック横浜 ベイホテル東急で2011年12月12日と13日に開催)の「FloTHERM Conference Day」で紹介された。登壇したのは、篠田卓也氏(電子技術2部 技術企画室 技術企画1課 担当係長)で、講演タイトルは「熱シミュレーションと最適化ツールを連成したECU熱技術開発」だった(写真)。

図1●シミュレーションの比率を上げて、効率化を図る デンソーのデータ。
図1●シミュレーションの比率を上げて、効率化を図る
デンソーのデータ。
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 同氏の講演のメイン・トピックは、電子機器向けの熱流体解析用シミュレータの「FloTHERM」(米Mentor Graphics Corp.の製品)と多目的最適化ツール「modeFRONTIER」(イタリアESTECO s.r.l.の製品)とを組み合わせた熱設計の最適化だが、その前に熱設計の効率化全般について語っている。大きな流れは、実験をシミュレーションに置き換えて、コストを削減することだ。冒頭に紹介したシミュレーションの高精度化は、置き換えられる実験項目を増やすために行っている。

 篠田氏の発表によれば、2009年のシミュレーションと実験の比率は2:8だった(図1)。それが2010年には5:5になった。シミュレーションの比率が上昇したことで、開発コストは2009年比で30%低減できた。2011年のシミュレーションの比率は2010年と同じだったが、シミュレーション技術を強化して開発コストは2009年比で50%低減した。

図2●熱解析用モデルの再利用を促進 デンソーのデータ。
図2●熱解析用モデルの再利用を促進
デンソーのデータ。
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 例えば、シミュレーションに使うモデル(立方体モデル)をライブラリ化して再利用しやすくした(図2)。現在は、新規のシミュレーション案件でも、2~3%の部品のモデルを作るだけで済むようになり、シミュレーション前の準備の期間やコストが大幅に低減した。準備期間は、現在、2日にまで短縮しているという。2015年にはシミュレーションの比率を9割に上げて、開発コストは2009年比で60%削減し、同時に開発期間も60%削減する目標である。